福田在住の鈴木靖之さん(44)と福田にある「モミヤマ幼稚園」の副園長を務める籾山健さん(33)がこのほど、園児の送迎バス置き去りを防止する支援装置を共同で開発した。園児が犠牲となる事故が全国で起こり国も動き出す中、二人はバス内の検知状況をカメラで撮影し、メールで即時通知する仕組みを考案した。
職員の数が限られる中、園児がトイレに隠れて見つからなくなったり、バスに取り残される可能性を懸念した籾山さんが、親交のあった鈴木さんに相談を持ちかけたことがきっかけ。鈴木さんの子どもが同園に通っていたこともあり、籾山さんをはじめ、地域の幼稚園が抱えうる課題の解決に乗り出した。
システム開発やコンサルティングを行う「株式会社ウルヴァニアック」(本社/東京都品川区)の代表を務める鈴木さんは、同社が手がけていた簡易防犯システムの仕組みを利用し、自動検知式の置き去り防止支援装置の開発に着手した。
同社の社名と「子どもを見守る」という意味を込め「うるまも」と名付けられた装置は、バス内にいる園児の検知状況をカメラで撮影し、メールで同園の職員に即時通知する機能を持つ。
装置は同園の送迎バスに設置され、実験的に運用を開始。送迎担当の職員やドライバーの意見を反映させながら、装置の精度を高めていった。「バスの外にいる人を検知するなど、精度の向上は苦労の連続だった」と鈴木さんは振り返る。
こうして、装置の開発から1年が経った昨年、静岡県内の認定こども園で女児がバスに置き去りとなり、熱中症で亡くなる事案が発生した。これを受けて、国は「送迎用バスの安全装置の設置の義務化」「安全装置の仕様に関するガイドラインの作成」などの緊急対策を決定した。
職員の負担軽減に期待
鈴木さんと籾山さんは実証実験を急ぎ、装置を完成させた。出来上がった装置は、バスのエンジンを止めたおよそ数十秒後にバス内のカメラが、人感センサーやAIによる画像認識機能によって検知を開始し、人が撮影されると即座に職員に画像がメールで送信されるというもの。今年6月には、国が定める安全装置のガイドラインにも適合、認定された。
今年の7月下旬から送迎バス4台に設置され、本格運用がスタート。籾山さんは「設置によりヒューマンエラーを少しでも排除することができるだけでなく、職員の心理的な負担も軽減されるのでは」と話す。
同園では、送迎後のバス内を同乗した職員とドライバーが確認し、さらに別の職員が各バスを見回る三重のチェックを行ってきたが、今年9月からは別の職員が見回る工程をなくす方針だ。籾山さんは「装置の設置により、職員の業務負担の軽減にもつなげられたら」と期待している。