徒然想 連載318 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、小利(しょうり)を捨てて大利(だいり)に至れ、です。
出典は、江戸代、鈴木正三(しょうさん)、『盲安杖(もうあんじょう)』より。
意は、利己的な小さい利益を捨てて、世の人々すべてを救うような大きな利益に向かって努力することが自分を大切にすることになる、ということです。
『盲安杖』は、正三の出家の前年に執筆されました。
人間は誰しも自分の身が可愛くないものはない。人は様々な行いをして日々を過ごすが、それは全てわが身の為。その中で自分だけの事でなく、広く人々の為に何を求めるかを模索した一人が正三です。彼が出家し、修行に勤めたのはこの為で、自分自身を思うことは同じでも、徳の見方が違うのです。
正三は説く。「いたれる人は誠の為に身命をなげうって、名利に留まらず。己を捨てて大利に至る。愚人は利欲の為に一命を惜しまずして、一生の間、心を悩まし身を苦しめて貪れども、一人として此のおもひみてるはなし」と。
目先の欲に目が眩み、本当に大切な事、物がみえないのが私達の日常ですが、欲を満たして幸せを得ることはできないのです。
今、正三のことばに真摯に耳を傾けたい。
桃蹊庵主 合掌