綾瀬市は今年度、畜産農家が使用する飼料用米の耕作や販売、購入に対する独自の補助制度を創設した。国と県にも同様の制度はあるが、自治体独自の上乗せ補助は県内初。背景には輸入に依存する配合飼料の価格高騰と地域で拡大する休耕田への懸念がある。
国際情勢の影響を受けて輸入配合飼料の価格高騰が深刻さを増している。そうしたなか綾瀬市は昨年度、同市吉岡の水田で飼料用米の試作を見守った。この試作には地元のコメ農家と畜産会社が参加。約5千平方メートルの休耕田に専用品種「夢あおば」を作付けし、1・78トンの飼料用米を収穫した。
これを受けて市は今年度、飼料用米の耕作に向けた機械と種の購入、荒廃農地の復元にかかる費用の半分を補助。加えて飼料用米の販売に玄米1キロ当たり30円、それを購入する畜産農家にも同3円の購入費補助を実施する。
国や県の補助制度に市の上乗せ分を合わせると、主食米の耕作と同等またはそれ以上の収入が得られる試算もあることから、市はこの制度が休耕田の解消や営農継続、新規就農の呼び水になることにも期待する。
食料自給率
半世紀余り畜産業界の環境改善に取り組み、千葉県で飼料用米の耕作を軌道に乗せた綾瀬市吉岡の畜産家、志澤勝さんは「綾瀬市の取り組みが県内全域に広がることを願っている。日本の食料自給率(38%)を引き上げるためにも耕畜連携は不可欠」と話す。
その志澤さんは、ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢による物流の混乱で穀物の価格が高騰を続けることに警鐘を鳴らす。輸入の配合飼料に依存する畜産農家の経営は年々圧迫され、廃業が加速。畜産経費の大半を占め、欠かすことのできないエサ代がさらに高騰を続ければ、国内の畜産農家はたちまち壊滅状態になる。食料自給率が4割にも満たない日本は深刻な食糧危機に陥る可能性もあると、志澤さんは指摘を続ける。
飼料用米増産のほか、政府は食料安全保障の強化を進めている。そうしたなか綾瀬市で始まった地域循環型農業を支える独自の取り組みは、県内自治体の農業政策にも一石を投じることになりそうだ。
新たな選択肢に
今年初めて、約3千平方メートルに飼料米を作付けした同市吉岡の男性は、「主食用米と比べて手がかからず育ちがいい。作りやすく収穫量も多い。一反あたり八俵以上の収穫になりそうだ」と話す。さらに、「人手や農機具の確保など営農環境に課題はあるが、水田を維持し、荒廃農地を増やさないための選択肢には十分なり得ると思う。軌道に乗れば、地産地消の取り組みにも繋がる」と、初めて経験した飼料用米づくりに手ごたえを感じている。
![]() 飼料米を食べる高座豚
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![]() 耕畜連携の関係者
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