綾瀬市は3月12日に、吉岡地区の道場窪遺跡と、同遺跡出土の土器と石器を市指定文化財に指定した。同遺跡は、縄文時代中期の集落とされており、市内で良好な状態で残存しているケースは少なく、貴重だという。同市の有形文化財の指定は、2020年以来17件目。史跡の指定は初のケースという。
道場窪遺跡は、1998年に行われたリサイクルプラザの建設に伴う発掘調査で発見された。調査では、竪穴住居跡28棟や掘立柱建物跡1棟、調理場の痕跡と見られる集石7基を検出。目久尻川の東岸に、弧を描くように広がる集落の一部が確認された。
集落の全体規模は東西約200メートル、南北約200メートルと推定されており、同市の市史文化財担当者は「発見された集落跡は、全体の16〜25%程度ではないか」と推測している。
同遺跡から出土した土器や石器は、908点が市指定文化財に指定された。内訳は土器233点、土製品181点、石器492点、石製品2点。なかには高さ約70センチの大型土器のほか、首飾りなどに多く見られる長さ4センチ、幅4・5センチのヒスイ製の大朱もあり、周辺集落と地域交流の痕跡を示す遺物とされている。
同遺跡の出土品は、漁網に取り付ける錘と見られる漁労具が多数含まれているのが特徴で、同担当者は「海に近い地域でもない内陸部でまとまった数の出土は珍しいケース」と説明。学識経験者で構成する綾瀬市文化財保護委員会(矢島國雄委員長)からも縄文時代中期の人々の暮らしや生活環境を考えるうえで貴重な遺物として、市の文化財へ指定するよう答申された。
今後について同担当者は、「河川の漁労は詳細不明な点も多く、さらに調査が進めば、縄文時代の生活様式が浮き彫りになるのではないか」と話していた。
同市では、毎年8月に行われている「文化財企画展」で出土品の一般公開を予定している。
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