新規連載 海老名むかしばなし 第3話「彦六ダブの話」【2】
(続き)暗い水底がそこだけ明るくなって、もえぎ色の絹の羽二重を着て、髪には七色に光るくしをさし、赤い玉のかんざしをつけていました。
美女は彦六の顔を見てにっこり笑い、『どうしてここへいらっしゃったの?』とたずねました。彦六がナタのことを話すと『ああ、それならうちの女中がさっきひろってきました。うちへいらっしゃい』と彦六を自分の家へ案内しました。
水の中なのに地上にいるのと同じように歩けるし、話すこともできる。彦六は信じられない心持ちで美女の家へと水底を歩いて行きました。
彦六は、これが夢なのか現実なのかわからない気持ちで美女の家へたどりつきました。
その家を見るなり、アッとおどろきました。今まで見たこともないような立派な御殿で、柱は全部うるし塗り、天井はすばらしい格天井(ごうてんじょう)で彦六はもうびっくり仰天。
美女が手をたたくと女中が色々な山海の珍味をあしらったごちそうを運んできました。ごちそうの中でも特にめずらしかったのは、「不老長寿の酒」でした。
あまりに居心地がいいので、三日三晩そこでやっかいになってしまいましたが、そろそろ家のことが心配になってきました。年老いた父母のことを考えるともう帰りたくて仕方がなくなりました。『家では心配しているだろうなあ。今までだまって家を空けたことはなかったんだから』と、とても気が重いのです。
…続く…
参考資料/海老名むかしばなし
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