日本舞踊千波(せんば)流(二代目千波一景家元・44)の直門師範千波朱永(しゅえい)さん(57)が9月9日、宮の里の自宅に併設した稽古場で日本舞踊の所作舞台をこしらえた舞台開きを行った。関係者や地域住民30人が訪れ儀式を祝った。
この舞台は、着工から3カ月。17畳半からなる檜の香りが漂う所作舞台の稽古場の隣には、8畳のサロンがあり、お茶を飲みながらリラックスできる空間が大きな特長だ。
舞台開きは、9月9日の重陽の節句に合わせて行われた。地域における文化芸能の研さんの場を作り、人との交流と、地域活動の活性化につなげることがねらい。一景家元によると、本格的な舞台開きを行うこと自体が現在では稀有なことだという。
祈祷込め御祝儀舞を奉納
当日は、20年ごとに行われる伊勢神宮式年遷宮で使われた材料をもとに作った総檜の神棚が奉られた。厳粛な雰囲気の中、午前10時から神主の高松良臣さん(千葉県柏市)が大祓い、祝詞奏上、玉串奉奠(ほうてん)を行った。その後、祈祷を込め、一景家元が「千代の寿」、朱永さんが「大慶びの舞」、分家の千波寛太郎さん(43)が「住吉」のご祝儀舞3演目を奉納した。
朱永さんは挨拶で一人ずつお礼の言葉を述べ、「不出来な弟子ですが、導いて下さった家元に感謝いたします。これからも精進して参ります」と感無量な様子だった。会場からは「頑張って」とかけ声が飛び、朱永さんが涙ぐむ場面も。
一景家元は「夢が実現した大感激の記念日。末永く地元、地域の方に愛される場であって」と話した。
朱永さんは秋田県の生まれ。約30年前に結婚を機に宮の里に移り住んだ。小学一年生のとき、旅館の湯治場で女性の師匠が子どもに『荒城の月』を教えているのを見たことが師匠に憧れたきっかけ。教えを始めたのは約10年前。2011年7月、厚木市日舞会の設立とともに副会長を務めている。
お弟子さんは現在2人だが、朱永さんは「教えることで自分も喜びを感じます。今まで歩んでこられた人生を踊りを通して表現していただけたら」と話す。
千波流は、坂東流八世家元坂東三津五郎さんの了解のもとに68年に詩吟舞踊千波流を創流したのが始まり。73年には小唄、端歌など小曲の振り付けにも携わった。その後歌謡曲、長唄新曲なども加え、坂東流の古典歌舞伎舞踊をもとに、一景家元と実弟の分家寛太郎さんとともに古典、新舞踊を確立した。
厚木に伝統芸能の交流拠点が誕生し、新たな歴史が刻まれた。
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