聞き書きを元に女性の視点から見た郷土の歴史に光を当てている、さがみ女性史研究会「さねさし」。3冊目の発行となる「続々・あつぎの女性―聞き書きと資料―」がこのほど完成し、9月18日には会員6人が厚木市役所を訪れ、完成本を贈呈した。
寄贈された本はA5判、191ページ。大正、昭和、平成を生きぬいた様々な立場の女性7人の体験談と、時代を掘り下げた歴史資料が添えられている。
この日は「さねさし」の飯田節子代表らが小林常良厚木市長と平井広教育長のもとを訪問。市教育委員会を通じ、中央図書館、各公民館、郷土資料館などへの閲覧用として40冊が寄贈された。
「高齢の方への聞き取りが多く大変でしたが、お話を聞かせて頂いたのは有り難いこと。色々な仕事の女性が書かれているので、市長にもぜひ読んで頂ければ」と飯田代表。小林市長は「聞き取りと編集をされたということで、並大抵の努力では出来ない。ご苦労に深く敬意を表します」と出版までの努力を称えた。
「さねさし」は1999年に発足。同会によると、県央地区で女性史を研究している唯一の団体だという。女性史研究家の江刺昭子氏の指導を受けながら、2004年に初の作品となる「あつぎの女性20人―聞き書き集―」を出版。2009年には明治期の相州自由民権運動に焦点を当てた「続・あつぎの女性―民権家子孫の聞き書きと女性史年表―」を発行。同作品は2011年に日本自費出版文化賞に入選した。今回はそれに続く、第3弾となる。
丹念な聞き書きと資料で綴る
さがみ女性史研究会「さねさし」が発行した「続々・あつぎの女性―聞き書きと資料―」。大正から昭和の初めに生まれた、7人の女性が歩んだ人生を一冊の本にしている。
医者のいなかった下川入で産婆として、1万人近くの赤ちゃんを取り上げた人。機屋に住み込みで働き、愛川の撚糸工業の最盛期を支えた人。戦時中役場の職員として「赤紙」を届け、戦後は700年続く名家に嫁いだ人。七沢に外国人抑留所があった頃、食べ物に困った抑留外国人に牛乳を分け与える父の姿を見ていた人。商店街の発展と衰退とともに人生を過ごした人…登場する女性たちは皆さまざま。それを聞き、文字に起こしたのも同じ女性たちだ。
どうしても男性の目線になりがちな歴史の記録を、日々の暮らしを生きてきた女性の生き方から読み解く―。そんな想いを元に集まった「さねさし」会員の平均年齢は73歳。同書の制作には約3年の月日を要した。その間には鬼籍に入った会員もいた。こうした会の歩みも、同書には年表とともに綴られている。
同書は10月下旬以降、有隣堂厚木店での販売が予定されている。価格は1000円(税抜)。
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