只今休刊中――。同業のよしみか、よく尋ねられる。「かわら版さんは休刊中なの?」と。かわら版とは、厚木市内で最古参の地域新聞『市民かわら版』(山本耀暉編集発行人)のこと。紙面のなかでも人気のコラム「風見鶏」を1冊にまとめた『風見鶏 1978▼2020』が刊行された。
1974年創刊の「市民かわら版」(以後かわら版)はタブロイド判・4頁で月2回(近年は月1回)、新聞折込で厚木市内に5万部発行。編集発行人の山本耀暉さん(69)が取材・編集・制作まですべて1人でこなしている。地域で一目も二目も置かれる媒体だ。かわら版の看板ともいえるコラムが「風見鶏」。連載開始から42年。これまで著した約900編のコラムを厳選、347編に編んだのが今回刊行された『風見鶏 1978▼2020』だ。
永久休刊みたいなものだから1冊にまとめた
創刊45周年を迎えた昨年8月、山本さんは17回目の心臓の手術に臨んだ。もちろん手術は成功。これまでも療養中は休刊してきた。山本さん曰く「自然休刊」だ。しかし今回は「40年で辞めるつもりがここまで来た。創刊45年の今かもしれない」と思った。「これからは永久休刊みたいなもの。だったら風見鶏を1冊にまとめよう」と思いたったという。
コラム風見鶏は「常に風上に向かって前を向く風見鶏を意識したもの」だ。同書の冒頭にはこう記されている。「風見鶏は庶民の判断や意見を代弁する役割を常に意識してきた。(中略)読者が我が意を得たりと共感する内容につとめてきたのである。それが市民かわら版のプライドというか矜持にもなっている。(中略)この間、厚木市長は石井忠重氏、足立原茂徳氏、山口巖雄氏、小林常良氏の4人に取って代わった。したがって庶民の眼から見た四代にわたる市政と地方自治の一部をとらえた歴史でもあると自負している」
コロナ禍中の編集作業となった。コラムの1編1編が山本さんにとってはすべてに思い入れがある、いわば子どものような存在。半分以下の347編に絞るのに3カ月かかったという。最後におさめられているのは未発表のものだ。タイトルは「グローバリズムと新コロナウィルス」。章末の一文にはこうある「われわれは近代システムと手を切る重要な岐路に立たされているのかもしれない。コロナ禍は文明の危機であると同時に文明の見直しも示唆しているのである」と。
これからのこと自分のペースで
881号を最後にかわら版は永久休刊の予定。今後について聞いた。来春ぐらいまでには市民かわら版の発行の45年の時間をまとめた随筆本を上梓予定。今回の風見鶏と双璧をなす1冊となる。その後は自分のペースで、好きな歴史や文化や評論などの雑誌的な本を発行していく予定だ。
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