日本人の死因で一番多い「がん」。怖い病気ではあるが、早期に見つけることができれば、治療をして回復する可能性が高くなる。9月は日本対がん協会が定める「がん征圧月間」。厚木市から、がん検診(施設検診)の委託を受ける厚木医師会で、担当理事を務める日野浩司医師と、佐藤史朋医師にがんと検診について話を聞いた。
まず、がんとはどんなものなのかを日野医師に聞いた。「生体の細胞の遺伝子に何らかの異常がおきて、正常なコントロールを受け付けなくなり自律的に増殖するようになったものを腫瘍と言います。この腫瘍が正常組織との間に明確なしきりを作らず浸潤的に増殖していく場合、あるいは転移を起こす場合に悪性腫瘍(がん)と呼びます」と話す。日本では、2人に1人が一度はがんになると言われている。
そこで、がんの予防のために国立がん研究センターが2011年にまとめたのが「がんを防ぐための新12か条」(表参照)。「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」「感染」の6つの視点からがん予防についてまとめている。
早期発見に有効
しかし、日野医師は「生活習慣の改善はがんの予防につながるが、それが全てではない。早期診断、早期治療には、やはりがん検診が有効」と言う。
がん検診の目的は、「病気かどうかを検査するものではなく、がんを早期に発見し、検診を受けた人たちの死亡率を下げるためのもの」。そのため、厚木市の場合は、厚木医師会のがん検診部会で精度管理をしっかりと行い、質の高い意義ある検診を実施している。「がんの死亡率を下げるためには、【1】治療の進歩、【2】検診の拡充、【3】生活習慣改善が必要と言われる。なかでも、今から簡単にできるのはがん検診。これからでも遅くはないので、ぜひ受診してもらいたい」と話す。
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がんのなかでも、最も死因の多いのが肺がん。厚木医師会で肺がんの専門医としてがん検診に携わっている佐藤医師は「肺がんは、2018年度の統計で死因1位。罹患数では3位との統計が出ています。つまり、罹患したうち、亡くなる可能性が高い悪性度の高いがんと言えます」と話す。その理由の一つとして挙げられるのが、「自覚症状が出にくいこと」と続ける。「肺の中は知覚神経が乏しく、肺内に腫瘍ができても痛くも痒くもありません。痛みとして症状がでるのは、肺がんが成長し肋骨や胸膜に到達してからであり、これはかなり進行している証拠です」と話す。自覚症状が出にくいため、発見するために有用なのが検診だ。
「がんが小さい時に見つかれば、治せる可能性も高まります。大きさが3cm以内で転移のない状態で発見できれば、8〜9割は手術治癒が期待できます(正確には5年生存率が8〜9割)。いかに早期発見できるかが、予後に直結するため、肺がん検診は非常に有用です」と話す。
二重体制で検診
厚木市の肺がん検診は、かかりつけ医と放射線読影医の二重読影体制で行っているため、「精度は比較的高い」と佐藤医師。それでも、判断に迷う場合は肺がん検診読影会で呼吸器専門医の意見も取り入れながら判断をしているという。「やはり、早期発見のためにがん検診は受けてほしい」と念を押す。
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厚木市では、がんになる危険性が高まる年齢に達した人に受診券を送付し、受診を呼び掛けている。がん検診を担当する市健康づくり課では、「5〜7月までの期間だが、市で把握している受診数は例年より少なく、例年の7〜8割程度」と話す。
新型コロナウイルスの影響による検診控えが考えられるが、日野医師は、「全国レベルで考えると、年間数千人以上の方が、早期でのがん発見ができなくなることになる」と懸念する。「異常が出るのが怖くて受けないという人もいるが、実際は何もない人の方が多い。気楽に受けにきてほしい」と話す。
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