厚木・愛川・清川 社会
公開日:2023.06.23
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ベテラン速記士の筆跡
足立原市長の頃から担当
厚木市議会を傍聴すると、演壇前に横向きの速記席が見える。じっと机に向かって作業しているが、その手元は見えない。時に難しい行政用語が飛び交い、早口の発言が飛び出す会議を、どのように記録するのか、議事終了後に書いてもらった。
一級速記士の大場久美子さんは澤速記事務所(世田谷区)で厚木市議会を担当する速記士4人のうちの一人で、第3代・足立原茂徳市長の時代から担当するキャリア35年のベテランだ。時には長時間に及ぶ質問や答弁の数々を、同時に書き留める「速記」。英語の筆記体のような速記符号は五十音から考案され、「衆議院式」や「参議院式」「中根式」などがある。大場さんは長時間書くために、太くて折れない芯のシャーペン、それも握りやすいグリップの品を選んで使う。用意する紙はペンの滑りが良い書道用半紙。議事の内容次第で厚さ数センチ分になる日もあるという。事務所に戻った後にICレコーダーや速記などを基に文字化(反訳)、議会事務局との確認作業を経て「校了」を目指す。
時代とともに、速記士を育てる専門学校はなくなり、議場での記録も録音による文字起こしに変わってきた。県議会は10年ほど前に速記席を廃止。愛川町や清川村の議会も速記士は出席していない。厚木市や海老名市、平塚市などでは今も本会議等で活躍する。速記の強みは、目と耳で確認しながら記録できる点にある。マイクのない場所での発言や言い合い、ヤジも書き留められる。誰の発言かも席次表などを見て確認している。
「昔に比べ、議会は早口になっていると思います」。過去の国会映像と比べても、議員の語り口がスピードアップしてきたという。テレビ番組などを眺めていると字遣いには敏感に反応してしまう。普段の速記で、発言者の「てにをは」の使い方などが間違っていた場合、訂正する事もあれば、あえて発言どおりに提出し、事務局に確認してもらうことも。一言一句を大切にしつつ、発言者の意図も汲まねばならない。曖昧な表現が多い日本語。仕事を通じて正確な記録とは何かを、考えさせられるという。
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