詰め将棋の本「楽しいサンテ(3手)」を出し、厚木市内の小中高校に寄贈した 加藤 俊夫さん 厚木市愛名在住 87歳
ひらめきの種まく人
○…盤上には数個の駒と王将だけ。3手で王将の退路をふさぐ「詰め将棋」の本を作った。コロナ禍で自宅時間が増し、執筆を決心した。相手に勝つには先々の動きを予測し、時には強い持ち駒を捨てる時もある。作った作品は2千を超え、続編の構想も。目指すは「シンプルで意表をつく問題」と目を見開いた。
○…中学時代に友人に誘われて将棋を始めたが、まったく勝てない。その友人は実は棋士のもとに通って教えを受けていた。負け続けながら戦術を学び、いつしか新聞にも載る実力がついた。その後理工系大学を経てソニーに就職。旭町の厚木工場で、画像を電気信号に変える技術の開発に没頭した。当時は世界的な開発競争の真っ只中。いくつ作ってもうまくいかず顕微鏡をのぞき「千に3つ」の成功例を探した。今では誰もがスマホで撮れる時代。「あの頃頑張ったかいがあった」と目を細める。
○…将棋以外の関心事は野鳥だ。外食で食べ残したご飯を持ち帰り、庭先でスズメに与え始めたのがきっかけ。自宅は愛名緑地や高松山の近くで、ヒヨドリやメジロ、ガビチョウなど数々の野鳥を図鑑で確かめる。家庭菜園にも挑戦したが、野山の近さが災いし葉物はシカに、落花生はサルに食べられ全滅。勝ち方を極める人にも、苦い思い出があるようだ。
○…この本を出したのは、地元っ子に考える力を養ってもらう意図もある。「世の中には人工知能もありますが、脳が退化する可能性もある。詰将棋で打ち勝ちましょう」。すでに100冊以上を作り、厚木市内の小中、高校に寄贈した。「売るなら値段は子どもは無料、大人は面白ければ、その分の金額で」と歯を見せた。将棋は情緒を排した論理の世界。だが広める思いは熱い。
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3月14日