東高伝説
私が厚木高校にいた昭和五十三年頃、生徒の男女比は4対1ぐらい。三年生は体育祭でフォークダンスを踊ることになっていましたが、三年生だけでは男子カップルばかりになるので一、二年の女子も駆り出されてオクラホマミキサーを踊っていました。見知らぬ後輩女子たちと次々に手を触れあうのは甘酸っぱい時間でありました。それでも女子の数が足りず、一部男子が女子役に回されたりして、当たりだ外れだと騒いでいたものです。
まだ厚高には男子校だった名残が色濃く残っていたのでした。一方、近隣の厚木東高校は純然たる女子高でした。入学当時にはこんな噂を聞きました。東高生徒がフォークダンスを踊りに来てくれる。その真偽は不明です。入学以来、東高と交流したことは一度もなかったのでローカルな都市伝説だったかもしれません。しかしアメリカ映画で観るような、隣のハイスクールの女の子たちとのダンス風景。それは夢想に溺れる思春期の青年にとって、限りなく胸膨らむものでありました。通学時、東高の制服を見かける度、無駄にドキドキしていたものです。
その後東高も共学となり伝説は更に遠く干からびましたが、この春、東高と厚木商業が統合され新たな高校に生まれ変わったと聞きました。時代の流れとは言え、両校の卒業生の皆さんは寂しい思いでいることでしょう。しかし青春はそれぞれの胸にあるもの。思い出は干からびません。
作・演出の松竹公演「トンカツロック」。東京のはずれにある商店街を舞台に、悩みを抱える3人の男たちやトンカツ屋・助六を巡る人情物語 https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202405_enbujo/
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12月13日