水墨画家の又村和夫さん(91・妻田西在住)が、このほど開催された全国平成水墨画展(全国平成水墨画協会、埼玉県など主催)で最高位となる文部科学大臣賞を受賞した。卒寿を過ぎ、30年の画業の集大成ともいえる栄誉に「年をとっても頑張れば報われるということを、同じ世代の人たちに伝えられたら」と達成感を噛みしめている。
又村さんが出展した「龍」は10数年前に制作した作品で、今年の干支に合わせて展覧会に初出展した。波しぶきの合間から天空に舞い登る龍を生き生きと描いた力作で、「このような技法は水墨画ではあまり使わないが」と、粉末の金を用いてきらびやかなアクセントを加えた。
文部科学大臣賞は、2011年の神奈川県水墨画公募展で受賞以来2度目の快挙となった。「『末期高齢者』のような自分が、このような賞をもらえるとは創作冥利に尽きる」と喜び、「会場には他にも龍の作品が並んでいたが、(自分の作品が)一番良かったかな」と冗談交じりに笑う。
又村さんは、息子の仲人を務めた画家から贈られたスズメと鶏の絵に感銘を受け、六十の手習いで筆を握るように。美術とは縁遠い人生だったが、半年後にはサロン・デ・ボザール展で奨励賞を受けるなど才能が開花。その後も展覧会で受賞を重ね、2015年に発行された厚木市制60周年記念誌では、表紙絵と裏表紙絵も手掛けた。
「墨一色の水墨画は見る人の想像力を掻き立てる。いわば心で見る絵のようなもの」と又村さん。90歳を過ぎた今も市内の公民館などで指導を続け、自身の技術を惜しみなく伝えている。今回の受賞を受け、「何歳になっても、続けていれば報われることを証明していきたい」と、さらなる創作意欲をたぎらせている。
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