市役所の窓口などで、来庁者に理不尽な要求をされたり暴言を吐かれたりする「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から職員を守ろうと、厚木市は庁舎内で啓発ポスターの掲出を始めた。社会問題化するカスハラ防止に向け、具体的な行為を列記して来庁者に周知と理解を呼びかける。
「それ、カスハラかもしれません」――こんな文言が記載されたポスターが、11月下旬から厚木市役所の各課に張り出された。
啓発ポスターの作成については、市議会9月定例会議の一般質問で高田浩市議(無所属)が言及。市側は、注意事項などを明示したポスターはカスハラ抑止に効果があるとして、作成に前向きな姿勢を示していた。
ポスターでは、カスハラの具体的な行為として「暴言・大声」「長時間の拘束」「過度な要求」「SNSへの掲載」の4点を職員が描いたイラストと共に紹介。ほかにも土下座の要求、居座り、差別的な言動なども該当するとし、これらの行為によって市役所業務に支障が生じる場合、対応を打ち切る旨を記載した。
市職員課の大島龍二課長は、「福祉関係や収納課などで窓口業務にあたる職員からの相談が目立つ」と話す。カスハラという呼称が定着したここ数年は相談件数も増加傾向にあり、主に年配の来庁者による言動が目立つという。
一方で、「市民の皆さまの要望にはできる限り真摯に対応したいという思いは強く、どこからがカスハラになるのか、その線引きに悩む職員も多い」(大島課長)という実情もある。
市では、弁護士資格を持つ職員が研修を行うほか、フローチャートや事例集などのマニュアルを整備。研修ではセクハラやパワハラ、マタハラなど各種ハラスメントの一項目として取り入れているが、今後はカスハラに特化した研修なども検討していく。
カスハラ防止に向けては、職員の名札を苗字のみに変更したり、条例を制定したりして対策に乗り出す自治体も増えてきた。大島課長は「それらの対応も視野に入れつつ、まずはポスターを通してカスハラの存在を来庁者に周知し、職員を組織で守る環境を整備したい」と話した。
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