横内謙介の劇場シアター談義 ―2 ―
映画館のない街で
厚木の街から映画館が消えて久しい。35年前、厚木ミラノ座で「宇宙戦艦ヤマト」と「スターウォーズ」の強引な二本立てを厚高の同級生女子と観たのが人生初デートだった私にとっても淋しいことである。
あまりに哀しいので、逆ギレ的に、いっそ映画祭でもやったらどうだ!と提案したら、面白がってくれる人たちが大勢現れ、この3月に実現することになった。題して「映画館のない街の映画祭」である。
うちら映画館はないけど、立派な映画祭はやっちゃうんだもんね。あの岸恵子さんとか六角精児とか招いて、映画愛のトークショウとかやるんだもんね。
そりゃ映画館があるに越したことはない。復活のために今も努力している方たちがいるのも知っている。しかし喪失したからこそ見えてくるもの、気付くこともあるだろう。映画館が街から消えたということが、街の人々にとってどういう事態なのか、みんなでしみじみ考えてみることは、時が巡って映画館が復活することになる日のためにも役立つに違いない。
映画館はないのに、良い映画祭が開かれる。そんな街なら、映画だって音楽だって、ここでやらせて欲しいって、向こうから頭を下げて来ると思わない?
劇作家・横内謙介
|
<PR>
11月8日