厚木市七沢の自然環境保全センターが全国で初めて発見した無花粉ヒノキ「丹沢 森のミライ」について農林水産省が3月15日、品種登録を公示した。同センターでは今後、さし木の採穂園を整備し生産を拡大する。
無花粉ヒノキ「丹沢 森のミライ」の登録品種名称は「神奈川無花粉ヒ1号(登録番号28988)」。存続期間は30年。このヒノキは、雄花をつけるものの正常な花粉が形成できないため、花粉嚢(のう)が開かず花粉が飛散しない。種子はできないが発根率が高く、さし木で苗木を生産することが可能だ。同センターによると、品種登録が公示されたことで社会的有用性のある品種として保護されるなどのメリットがあるという。
花粉症の原因となるヒノキやスギ。無花粉のスギは1992年に富山県で初めて発見され、その後神奈川県内でも発見され、苗木も生産されている。県では、ヒノキについて05年から花粉の少ない品種の生産を行ってきたが、11年から2年間にわたって県内約4千本のヒノキを調査した結果、12年に秦野市内で全国で初めて花粉を飛散しない個体を発見。ヒノキの基準品種等との比較実験を経て、品種保全のため18年に農林水産省へ品種登録を出願した。
その後県では、神奈川県山林種苗協同組合と許諾契約を締結し、19年から苗木の生産を開始。すでに21年に愛称「丹沢 森のミライ」として初出荷も行われ、秦野市寺山に132本が植栽されている。今後は、同センター内のさし木採穂園で生産を拡大し、『神奈川県花粉発生源対策10か年計画』に基づき、27年度までに花粉対策苗木の生産目標15万本のうち、1割をスギ・ヒノキの無花粉苗木にすることを目指す。同センターでは「無花粉のヒノキを多くの方に知っていただきたい。森資源の活用と花粉対策を同時に進めるきっかけになれば」と話す。
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