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愛川町の戦争遺跡「平山橋」 戦禍物語る無数の弾痕

社会

公開:2024年7月19日

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国登録文化財にもなっている平山橋
国登録文化財にもなっている平山橋

 土木学会による「日本の近代土木遺産」にも選出されている、愛川町田代の鋼橋「平山橋」。中津川に架かるこの橋は、太平洋戦争末期の1945年7月10日、米軍機の機銃掃射を受けた。生々しい弾痕が残る橋は、戦禍を物語る戦争遺跡としての役割も担っている。

 3連からなる平山橋は1913(大正2)年、左岸側の1連のみが鋼橋、残りの2連が木橋として建造され、1926(同15)年に総鋼橋造りとして完成した。橋長は112・71m、幅員4・5m。リベット構造の鋼橋は全国的にも希少とされ、2004年には国登録有形文化財になった。

 橋の欄干や柱を注意深く観察しながら橋を歩くと、所々に直径1cmほどの穴が開いているのが分かる。米軍機の機銃掃射によるものとみられる弾痕だ。

 戦争末期の1945年7月10日正午過ぎ、愛川町上空に2機のP51ムスタングが飛来。50口径(12・7mm)の機銃から放たれた弾丸が、頑強な鋼材のそこかしこに貫通した。

 愛川町郷土資料館(半原)の学芸員・山口研一さんによると、2機は小笠原諸島南端の硫黄島から出撃した機体で、八王子方面から帰還する際に中津飛行場がある愛川町を標的にしたと考えられるという。「残った弾を、愛川町上空からばらまいたのだろうか」と山口さんは推察する。

 機銃掃射により、橋のたもとに住んでいた看護師の女性と、疎開児のために横浜から荷物を運んできたとみられる男性の命が奪われたほか、負傷者も出た。同館が戦争体験者や家族らへの聞き取りを行う中、眠っていた赤子のすぐ上を弾丸が通過し、部屋にあるたんすに当たったというエピソードを持つ人もいた。

 同館ではこれまでも、「戦争の記憶」と題した企画展を開催しており、来年の終戦80年に向けて新たな資料を戦争体験者の遺族などから収集しているという。

 問い合わせは同館【電話】046・280・1050へ。

トラスの斜材に空いた弾痕とみられる穴
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