大山阿夫利神社(目黒仁宮司)能楽殿で10月1日と2日、「第43回大山火祭薪能」が開催された。主催は火祭薪能実行委員会、一般社団法人伊勢原市観光協会。かがり火が照らす屋外舞台の能狂言に、観客らは酔いしれていた。
大山能狂言は、300年以上の歴史を持つ神事芸能。江戸時代に大山山内の宗教者同士の対立に頭を悩ませた幕府が、紀州の観世流能楽師を呼び寄せて能楽を教え、共に修練することで争いを治めたことが始まりとされる。戦後の混乱と後継者不足で一時期途絶えたが、1981(昭和56)年に大山阿夫利神社の火祭薪能として再興され、現在は市の文化財に指定されている。
会場では火祭神事、火入れ式などが阿夫利の峰々に響き渡る太鼓の音ともに厳かに執り行われ、仕舞「道灌」、「邯鄲」、「玉鬘」、狂言「呼声」や「柿山伏」、能「井筒」、「融」などが演じられた。来場者は秋深まる大山で、幽玄の世界を堪能していた。
また、大山能の次世代継承を目的に大山能楽社保存会が実施している「大山能狂言親子教室」の参加者らが、約半年にわたり練習してきた成果を披露。仕舞「道灌」や「鶴亀」、狂言「鬼瓦」、「蟹山伏」などを舞う子どもたちの晴れの舞台に会場から大きな拍手が沸き起こった。
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