存続が危ぶまれている市の代表的な伝統工芸品「大山こまの製作技術」を後世につなげようと、市民有志5人が立ち上がり、基本的な技術習得に向けた第一歩を踏み出す。8月24日(土)、愛知県瀬戸市の「Wood Village Inoue」(井上重信氏)の「木工ロクロ教室」に参加し、こま作りの基礎を学ぶ。
江戸時代から続く大山詣りを代表する土産品の大山こま。その製作技術は市指定文化財となっており、日本遺産「大山詣り」の構成文化財、さらには国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択されている。しかし、技術保持者の相次ぐ他界や高齢化による廃業などで、その存続が危惧されていた。
近年では、伊勢原青年会議所による道灌まつりでのこま大会、昨年から始まった「大山こまフェスティバル」など、大山こまの魅力を広めていく機運が高まってきてはいるものの、物価高騰による原材料費の上昇なども影響し、新たな製作の担い手が見つからないという状況が続いていた。
また、大山こまの唯一の作り手である金子屋の金子吉延さんも自身の店舗の営業やそこで販売するこま作りに追われており、後継者が現れた場合の育成をどうするかという点も大きな課題となっているという。
「何もしなければ失われてしまう」
こうした状況の中で、「大山こまフェスティバル」の運営に携わった「いせはらplusプロジェクト」のメンバーらが「大山こまの製作技術を後世につなげるため、現実的にできることから始めたい」と名乗りを上げた。メンバーは中村直純さん、高橋真人さん、久本卓司さん、相原和教さん、青木孝幸さんの5人。
久本さんは「本格的な職人として伝統を継承することが難しいのは事実だが何もしなければ本当に失われてしまう。まずは自分たちで木工技術に触れて少しでも大山こまを残せる可能性を模索していきたい」と話す。
金子さんが会員である日本ウッドターニング協会やその他の技術者などから情報を収集し、「木工ロクロ教室」の情報を知り、技術習得に向けて参加。同教室で道具の使い方など、こま作りの技術を身に着ける上での基礎を学んでいく。
青木さんは今後「旋盤の技術や大山こまの技術を金子さんから学ばせていただき、伝統玩具を引き継ぎ、子どもたちに絵付け体験などを通して大山こまの魅力を伝え続けられたらと考えている」と話している。
この動きを受け、市教育委員会教育総務課では「大山こまの技術継承についてはまだまだ課題も多いが、今回の取り組みは非常に大きな一歩だと考えている」と期待を寄せる。「今回の取り組みをきっかけとして、こま作りに興味を持っていただける人が増え、伝統技術を後世に伝えていくことの機運が高まればと考える。市としても補助金等をできる限り活用しながら大山こま継承について今後も取り組んでいきたい」とした。
※大山こま…心棒が太く安定感のあるどっしりとした形と、紺、赤、緑などで色彩豊かに彩られたろくろ模様が特徴。神奈川名産100選のひとつに選ばれている
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