海上自衛隊厚木航空基地 第4航空群 第3航空隊所属の川合文子二等海佐(海老名市在住・40歳)が、このほど海自初の女性飛行隊長に就任した。P―3C哨戒機を操縦する機長を務めると共に、第32飛行隊長として「国防」という役割の一翼を担っていく。
海上自衛隊の主な任務は、日本周辺海域の防衛。他国の艦や潜水艦、不審船、武装船などの警戒監視を行う。川合二佐が所属する第3航空隊は哨戒機による上空からの監視のほか、大きな病院を持たない離島からの急患搬送や、災害時の情報収集・物資輸送、遭難船舶等の捜索などの役割も担っている。
始まりは”憧れ”
一般大学出身の川合二佐が自衛隊入隊を志したのは、就職活動が始まる大学3年生の時。航空自衛隊浜松基地を擁する静岡県浜松市出身で、子どもの頃は航空機を見るのが好きだったこともあり、自衛官に対する憧れを持っていた。
陸・海・空の中で選んだのは、旧海軍の伝統を受け継ぐ海上自衛隊だった。「もともと日本の歴史や伝統が好きで、大学でも歴史を専攻していた。自衛隊の中で海自は帝国海軍からの良き伝統を引き継いでいると感じ、興味を持ちました」と川合二佐。「あと、制服が格好良かったというのもあります」と首をすくめ笑うが、「海という日常では経験できない職場で、新たなことに挑戦しよう」という思いと「国防というやりがいのある仕事に携わりたい」という熱意が根底にあった。
「女性隊員の目標となる存在に」
海自入隊後、航空隊への配置を希望したのは、自衛隊初の女性パイロットの存在を知ったのがきっかけだった。それまでは、女性がパイロットになれることを知らなかったという。
空に憧れを抱き、「自分も飛行機を操縦したい」と熱望した川合二佐は、念願叶い操縦士を育成する「教育航空隊」に配置される。
「そんなにセンスのある方じゃなかったから、苦労した」と訓練生時代を振り返る。日常生活では気付かなかった高所恐怖症が発覚するなど、適性の問題で配置換えに涙を飲む同期もいたそうだ。
厳しい訓練を経て配属されたのは、厚木基地に所在する第51航空隊。操縦士としてではなく、研究開発などを行う部門だった。
「当時の海自はまだ配置制限があったんです」。訓練生として同じ釜の飯を食べた同僚男性たちが操縦士として現場で活躍する姿を、もどかしい思いで見ていることしかできなかった。
配置制限が撤廃され、川合二佐が第3航空隊に配置されたのは2007年。初めての任務では国防に直結する大きな役割の一端を担っているという実感が湧き、「がんばってきて良かった」と当時の思いを語る。
その後、防衛省の海上幕僚監部や、指揮官等を育成する幹部学校などを経て昨年12月、再び第3航空隊に。そして今年3月、女性初の飛行隊長に任命された。
就任から4カ月。一番大きく変わったと感じるのは、外からの目だという。これまでの仕事で女性であることを特別意識したことはなかったそうだが、今は「初の女性飛行隊長」という肩書に注目が集まっていることを感じているようだ。「私の評価が、そのまま女性隊員の評価になってしまう場合もある。がんばらないといけないという思いが強い」と表情を引き締める。
「部隊の指揮官としては、男女関係なく重い責任を背負っているので緊張感を持って任務に当たりたい。後に続く女性隊員の目標になれるような存在になれれば」と、これからの意気込みを語った。
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