地域の子どもたちにボランティアでボクシングを指導している 深谷 進さん 安浦在住 70歳
ミットに願う子の成長
○…夕暮れ時になると、少年たちがミットをパンチする音が響く。上は大学生、下はおむつが取れたばかりの男の子がお兄ちゃんの真似をしてグローブを欲しがる。自身が営むクリーニング店での日常の光景だ。彼らのパンチを受けながら望むことは、決してボクシングがうまくなることだけではない。「あいさつができるようになったり表情が明るくなったり、人間的に成長してくれるのが一番嬉しいです」と微笑む。
○…かつてはキックボクシングの日本王者を育て上げた敏腕トレーナー。60〜70年代にかけて一大ブームだった頃だ。ジムをたたんで20数年後。今から7年前に転機が訪れた。父親になった当時の教え子から「息子にボクシングを教えて欲しい」と頼まれたのを機に、地域の子どもたちにもボランティアで指導するようになった。今では約20人が毎日練習に励んでいる。ミット打ちの大きな音にも近所の理解が得られていることに、感謝の言葉を述べる。
○…日が暮れた夜9時半。ミットを誘導灯に持ち替えて、防犯パトロールに出発する。06年に米が浜で殺人事件が発生して以降、取り組むようになった。近所にも「何かあれば電話してほしい。飛んでいくから」と伝えている。ともすれば自身に危険が及ぶ可能性もある。「この歳になれば人生余力だと思っています」と笑うが「高校生とスパーリングをやっても負けないから大丈夫です」と頼もしい。
○…今月横浜で行われた「全国ちびっ子ボクシング大会」で勝利した男の子。2年前に始めた当初は笑顔が少なく、引っ込み思案だった。今では、試合に勝っても「まだ練習が足りない」と満足していない様子だという。その成長を一番近くで見てきた。今の社会状況にも敏感。「学校に行けない子や、いじめられている子も来てもらいたい」。自分に自信をもって、人の痛みが分かる大人になって欲しいから。その願いを胸に、今日もミットを構える。
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