窓口での「聴こえ」助ける 追浜行政センターに会話補助装置
行政窓口で担当者の声が聞こえづらかったり、話が伝わらなかった―という経験はないだろうか。65歳以上の高齢者の半数は、日常会話が小声だと聞き取りにくい「加齢性難聴」の症状があると言われる。窓口での対応を円滑にするために、追浜行政センターと役所屋追浜店では、今年から「会話補助装置」を試験導入している。
行政センターの窓口の主な業務は、証明書の発行や届出、これらに関わる相談など多岐にわたる。特に相談業務においては、プライバシーに関わる内容が多く、「日頃から声のトーンにも気を配っている」と同センターの窓口を担当する大矢さんは話す。だが、聞き取れているのか、理解してもらえているのか、相手は相談したいことを伝えられているのか―と思うことも多いという。
同センターと役所屋追浜店では今年2月から、Jumpers株式会社(本社/横浜市神奈川区)が開発した「会話補助装置=写真左下=」の試用を始めている。窓口担当者と利用者が、互いにイヤホン付きのアームを首に装着し、イヤホンを耳に入れてボリュームを調節するだけで、小声でも鮮明に聞き取ることができる。ベースユニットを介して音声を届けるため、周囲の雑音を拾うこともないという。
「健聴者は難聴者について知らないことが多い。一方で難聴者は、始めは自覚がなく聞こえたふりをすることも多い」と装置を開発した北見雅則さん。電子機器メーカーから独立して同社を立ち上げた。行政などの相談窓口では、聞き間違いからのトラブルや、聞き取りづらさから相談すること自体を億劫に感じる人も少なくないという。そうした問題を少しでも解消したい―とこれまで培った技術を活かし、会話の”聴こえ”を補助する装置の製作に辿り着いた。
今はまだ、1カ月に数件程度の利用だが、「相談に来られた人が、話しているうちに表情が和やかになっていった」と概ね好評だという。「窓口業務の担当として、聞きたいこと、相談したいことにできるだけ応えたい」と大矢さん。「窓口に老眼鏡が置いてあるように、聞こえづらい人の”補助装置”として気軽に使ってほしい」と同センターの阪元館長は話す。
市庁舎は筆談で対応
市役所では各窓口に「耳マーク」を掲示し、要望がある場合は筆談で対応しているという。行政情報や問い合わせには、コールセンターやインターネットでの対応が進んでいるが、聞こえづらい人は電話での問い合わせが難しく、窓口に直接訪れるケースが多いと言われる。聴こえの度合いは人それぞれだが、高齢化が進む中で、聞こえづらい人に対する窓口対応も求められている。
講演会で実証実験
また、この装置は音声を半径30m以内の複数の人に送信可能なため、大人数が集まる講演会などでも活用できるという。市内では、今月開講した市民大学の歴史講演会でも実証実験を行っている。マイクで声を大きくすることは可能だが、受講生の「聴こえ」はバラバラだ。高齢化が進む中で「聞こえない、聞こえづらいからといって、社会参加・社会活動を避けることはあってほしくない」と北見さんは話している。
![]() イヤホンを耳にするだけで、鮮明に聞き取りができる。
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