三浦半島の相模湾に面する漁場などで「アイゴ」による磯焼けが問題となっている。ワカメやヒジキ・アカモクといった海藻類を食べてしまうだけでなく、毒針を持っているため市場ではほとんど買い値が付かないという。そうした「厄介者」を活用しようと市内関係者が乗り出している。
スズキ科のアイゴは、体長30cm前後で主に沿岸の岩礁に生息。雑食性で海藻なども食べるため長井や大楠、城ケ島などの漁場で磯が死滅状態になっているという。サザエやアワビの餌となるカジメ(海藻)も食べてしまうほか、鰭(ひれ)に鋭い毒針があり、処理が遅くなると臭みが出てしまうことから、この地域での商品価値は皆無。市場でも扱いづらいと敬遠されている。
三浦半島の主に相模湾側で、アイゴによる磯焼けが見られるようになったのは、「5〜6年前くらいから」と県の水産技術センター担当者は話す。現状としては、原因を減らすための駆除を優先している。
藻場の保全活動として、城ケ島漁協では国の補助を受け、3年前から刺網による駆除事業を年数回実施している。長井でも数年前から漁場に見られるようになったと言い、同町漁協でも潜水部会が捕獲を行っている。海藻類を守るために必要な作業だが「手間がかかるうえに、(獲っても)流通経路もないため効率が悪い」と頭を悩ませる。
両地区や大楠地区では、ウニの一種「ガンガゼ」による食害対策も行っており、これに加えて県では今後、地形とアイゴの生態の関連性など、調査研究も進めていくという。
「クセなく美味しい」商品化も
そんな「厄介者」―、食すとどうか。棘や内臓をすぐに処理すれば、刺身や煮物・干物など他の魚と遜色なく美味しく食べられるという。「認知を高めて市場を開拓し、買い手が増えれば」と対策に乗り出したのが市議の嘉山淳平さん。磯焼けの現状を知り、食材としての可能性をフェイスブックで呼びかけたところ、市内の飲食店や加工業者から「使ってみたい」と声が上がった。
市場に水揚げされたものを直送し、追浜の「うれしたのし屋」では刺身や揚物など数種類のメニューで提供。処理に手間はかかるが、「すぐに調理すればクセがなく、どんな食べ方もできる」と下澤敏也さん。味噌漬けにしてメニューに加えた「かっぱ」(追浜)代表の齋藤仁克さんは「地元の海の環境保護を、食べて応援する形になれば」と話す。ほかにも、加工業者が干物や塩こうじ漬けを試作するなど、商品化の動きが広がっている。
「現状では”駆除”のため獲っているが、美味しく食べられる魚であることをPRして市場で正規の値が付けば、価値も生まれる」と嘉山さん。今後も、市内の飲食店などに活用を呼び掛けていくという。
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