ひとり暮らしで身寄りのない高齢者の「終活」を支援―。横須賀市は昨年7月、「エンディングプラン・サポート事業」を始めた。生活にゆとりがない単身者のリビングウィル(延命治療意思)や葬儀納骨のプランを事前に取り交わすもの。開始から約1年、同事業に対して市外からの視察や問い合わせも相次いでいるという。
現在、市内ではひとり暮らしの高齢者が1万人を超え、増加傾向にある。毎年、身元が分かっていながらも引き取られない遺体は年間50体近く。その遺骨は、浦賀にある無縁納骨堂に市職員が納め、満杯になると別の合葬墓にまとめられるという。そこでの個別の供養はない。市福祉部自立支援担当課長の北見万幸さんは「その多くが生活困窮者。切り詰めた生活をしつつも、幾らかの預金を残している。これで葬儀を…という意思にも見えるが、相続人でなければ手を付けられない」と現状を話す。そこで昨年7月、身寄りのない単身の高齢者と「死後事務委任契約(生前契約)」を交わす、エンディングプラン・サポート事業を立ち上げた。
市内葬儀社が協力
自分がどのような「生」を全うしたいのか―。終活の一環として、延命や治療の意思、葬儀の希望などをまとめた「リビングウィル」に関心が高まっている。
しかし、これを作成しても、身寄りがない人は周囲に知らせる術がない。市役所が預かる方法も考えたが、開庁しているのは平日の日中のみ。そこで「夜間も対応できる葬儀社と、その意思を共有できれば」と、同事業では市内の事業者9社との協力体制を整えた。
対象としているのは、身寄りがなく、年金などの月収18万円以下の単身者。市が相談窓口となり、葬儀・納骨・死亡届出人・リビングウィルについての事前意思表示、かかりつけ医や定期訪問の希望などをまとめ、書面に残し保管。これに併せて、葬儀社を選んで生前契約を結ぶ。費用は、生活保護法の葬祭扶助基準に合わせた20万6千円以内で先払い。市は契約の現場に立ち会い、死後は本人の希望通りに葬儀・納骨が行われるかを見守る。病院からの問い合わせに備え、緊急時の連絡先や希望を記した、携帯用の「登録カード」と、玄関先などに貼れる「登録証」も作成している。
同事業を「生前の本人の意思を聞いて、その尊厳の完遂を目指したもの」と言う北見さん。開始以降、数人がこれを利用しており、同事業の対象となっていない人の終活相談も、弁護士会や司法書士会の専門家へ繋いでいる。
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開始から1年余り、全国でも珍しい「横須賀方式」に注目が集まる。当事者以外に、市外の自治体関係者からの相談や視察は1カ月に4〜5件。大和市は、横須賀と同じ仕組みの「葬儀生前契約支援事業」を先月から始めている。目下の課題は、事業の周知。北見さんは「希望を伝え相談することによって、社会からの孤立を防ぎ、”最期の不安”を解消する手立てにもなるのでは」と話している。
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