横須賀市は、2016年から就学援助受給世帯の中学3年生を対象に、無料の学習塾を開講している。市内のコミュニティセンター等を会場に実施している学習支援事業。市から委託を受けた団体が事業を運営しており、学習だけでなく軽食の提供など居場所づくりの目的もある。週1〜2回、午後6時30分ごろから約2時間の授業で、目標としているのは全日制高校への進学。通塾の費用を捻出することが難しい家庭に向けて、基礎学力の定着と学習意欲を後押しし、貧困による教育機会の格差をなくしていく考えだ。
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市では市内を概ね3校ごとの9地区に分けて順次開設し、昨年度までの4年間で浦賀・中央・長井・追浜・大津・衣笠の6地区に設置。元教員らが立ち上げた「NPO法人こどもの夢サポートセンター(ゆめ塾)」と「NPO法人こどもの未来応援ラボ」が市から委託を受け、少人数制で主に英語と数学の学習支援を行っている。これまでの受講者からは「最初は不安だったが、勉強が楽しいと分かった」「進学に前向きになれた」との感想も上がっており、受講生はほぼ希望の高校に合格。学力定着に一定の成果もあり、中退を防ぐ役割も大きいという。
今年度は久里浜・武山
未設置だった久里浜地区では、この6月からスタート。インクルーシブ学童保育や託児所などを手掛ける「一般社団法人sukasuka─ippo(すかすかいっぽ)」が同事業の委託を市から受け、新たに「Leaning Support」を立ち上げた。
開講日の6月5日、会場の久里浜コミセンに訪れた生徒は6人。個別の学習定着度を見るため、英語と数学のテストを行った。今後は、生徒を少人数のグループに分けて講師を1人ずつ配置。新型コロナの影響でスタート時期が遅れたが、受験前の2月中旬まで全54回の開催を予定している。指導に当たるのは、非常勤の現役中学校教員や大学生など6人。当面、講師はフェイスシールドを着用し、換気や消毒などに気を付けながら進めていくという。
障害児の親に向けた情報発信や「インクルーシブ学童」など、支援の必要な子どもの受け皿を広げてきた同法人。代表の五本木愛さんは「以前から学習支援事業の構想を持っていた」と話す。「学校の授業でつまづいたり、勉強の意欲が上がらないなど”サポート”が必要な子どもは少なくない。不登校の子も同様。保護者ができることも限られていて、塾を選ぶのも難しい。そこで、支援の場を独自に立ち上げようと考えていた。今年度は市の委託事業を通して、”できること”を模索したい」と五本木さん。学習支援事業では、学童と兼任しているスタッフもおり、「今の子どもたちの状況を理解しながら、寄り添っていきたい」と話している。
今年度はもう1カ所、武山・大楠地区に開設された。「こどもの未来応援ラボ」が事業を担当している。未設置の北下浦地区には、来年度中に設ける予定。
「軽食提供」企業も協力
軽食の提供では、地元企業が協力している。久里浜では6つの企業と店舗がサポート役を買って出た。初日は授業後におにぎりと簡単なおかずのセットが生徒らに手渡された=写真。
学習支援の取り組みに賛同の意を示す臼井不動産の臼井功次会長は「すべての子どもが平等に学べる場所を」と願う。地域社会への貢献は企業の役目との持論を持ち、最初に名乗り出た。「周囲への感謝の気持ちも育むことで幸福の好循環をつくり出せれば」と臼井会長は期待を口にした。
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