神奈川県農業技術センター(平塚市)が開発したイチゴの新品種「かなこまち」が、横須賀でもごろっとした赤い実をつけている。昨年末に発表され、県独自の品種としては、1986年に登録された「紅寿(こうじゅ)」以来のブランドだ。津久井浜観光農園で収穫体験ができるほか、不定期ではあるが、長井にあるJAよこすか葉山の直売所「すかなごっそ」で販売されている。
「かなこまち」は、「オリジナリティー溢れる県産イチゴがほしい」という生産者からの要望に応えるため、同センターが2014年から開発をスタート。静岡県育成品種「紅ほっぺ」と群馬県育成品種「やよいひめ」を交配させたもので、20年9月に品種登録出願された。
糖度が10〜12度と高めで、酸味とのバランスも良く、ジューシーで爽やかな味。果肉は大粒でやや硬く、中まで鮮やかな赤色が広がっているのが特徴だ。生産面では、面積あたりの収穫量が多いため、農地が狭い都市部での栽培にも適している。ネーミングは「神奈川県」と世界三大美人として知られる「小野小町」を由来としており、「神奈川生まれの美しくておいしいイチゴ」との思いが込められている。
一昨年から試験的に栽培され、昨年6月から神奈川県いちご組合連合会に所属する会員123人のうち、小田原や秦野、厚木、海老名など県内53人が取り扱いを開始した。横須賀では、同連合会で会長を務める山田智さん(59)が中心となり、津久井浜観光農園で生産している。
600株まで増産
市内でも有数のイチゴの産地として知られる津久井エリアで、14件の農家がタッグを組み、約1年にわたる試行錯誤の末、当初20株ほどの苗を600株まで増やすことに成功した。山田さんは「夏場には雨の影響で、葉が枯れる病害に悩まされたけれど、毎日丁寧に世話して何とか実がなった」と苦労を振り返る。
現在、同園全体の約10分の1にあたるスペースで栽培。年初からイチゴ狩り専用品種として、来園者が摘み取りを楽しんでおり、5月5日(木)まで収穫体験できる。
同園は、例年であれば8万超の人でにぎわっていたが、昨年は新型コロナウイルスの影響で、半分ほどに減少。それでも「たくさんの人に新しく生まれたイチゴを味わってもらいたい」と、感染予防対策としてハウス内を一方通行にすることで「三密」を避けるといった工夫を凝らしている。
「35年以上イチゴを育ててきたが、『かなこまち』は味も見た目も太鼓判を押す出来栄え。神奈川を代表する人気商品になれば」と山田さんは期待を寄せる。
「すかなごっそ」でも4月ごろまで商品として並ぶが、まだ十分な供給に対応できないため、不定期での販売となる。
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