横須賀美術館(鴨居)で開催されている特集展示、「小田扉の『横須賀こずえ』展」。横須賀のとある町、王島家に拾われた犬・こずえとその周囲のちょっと不思議な日常を描いた漫画作品で、2019年から週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載。細かく描写された市内のさまざまなスポットと『こずえ』の目線や小さな発見を編んだストーリーに、じわりとファンを増やしている。
作者の小田扉さんは市内在住。美術館での展示や地元を舞台にした作品を手掛けたきっかけ、『こずえ』の秘密について聞きました。
――美術館の展示会場ではイラストを壁に直書きされていました。自身の「作品」が並んだ姿はどうでしたか?
「原画展そのものが私にとっては初めて。美術館の学芸員さんから声を掛けていただき、最初はどうしようか...と思っていました。展示会場で自分の作品を見るのは一言でいうと、不思議な感覚。家族などを連れて2〜3回行きました。私は犬を連れて待っていましたが...」
――「横須賀×犬」のストーリーはどのように生まれたのですか?
「(こずえの前に)連載していたのが、『団地ともお』という作品でした(03年から19年までスピリッツに掲載)。これは小学4年生が主人公で、舞台は架空の団地。次に...と考えた時に出てきたのが犬。ちょうど犬(トイプードル)を飼い始めたことと、これに何か要素を加えたい...と横須賀の街を織り交ぜることにしました。自分がやらなさそうな設定に挑戦してみたいという気持ちもあったので」
――『こずえ』という名前や、たびたび出てくる横須賀の坂道など、設定の妙も読者を引き込んでいます。
「こずえという名前は家族の友人の犬から拝借しました。犬らしくないところが良いと思って。自然とこのような風貌になっていました。"地元ネタ"は、当初はそこまで考えていなかったのですが、メジャーなロケーションよりもニッチな場所のほうが少し"くすっと"するかもしれないな、と。市内に越して来て6年なのですが、それまでほとんど"横浜以南"に足を延ばしたことがありませんでした。近所に、どこからつながっているのか分からない階段があるのですが、日々の犬との散歩や取材で、新たな発見にもたくさん出会います。犬を連れてトンネルでしばらく立ち止まっていたり。連載でのお気に入りは、市の自然・人文博物館のナウマン象が出てくる回。コロナ禍の現地での取材も思い出深いです」
――そもそも、なぜ漫画家に?
「学生時代、絵はどちらかというと下手な部類だったのですが、同人誌活動していて、漫画家になりたいと思い立ち、大学卒業後に島津郷子先生のアシスタントになりました。なぜ自分が採用されたのか分からないのですが...数年間鍛えられました。しばらくは、親には製図関係の仕事と言っていました。20代半ばでデビューできたのですが、雑誌編集部への原稿持ち込みのタイミングや、これまでの経験、(横須賀こずえの)ストーリーのテーマも不思議な縁で結ばれているように思います」
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特集展示は6月26日(日)まで開催中。横須賀美術館SNSで小田さん書き下ろしのショートストーリー(「男ロワイヤル 横須賀 第一斗 真ヴェルニー像を追え/第二斗 平作川の鯉」)を公開中。詳細は同館ホームページ【URL】https://www.yokosuka-moa.jp/index.html
展示についての問い合わせは【電話】046・845・1211
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