──まずはJWA会長就任の経緯を教えてください。
「東京五輪の招致が決定した2013年頃、YRPにあるNTT横須賀研究開発センタの所長を務めていました。前会長から『ICTの活用でウインドサーフィンをメジャースポーツに昇華させたい。協力してもらえないか』との相談を受けました。ウインドはオリンピック種目になっていますが、大半の人はそれを認知していません。時代の花形として若者の人気を集めていたこともありましたが、現在は少数の愛好者が支持する特殊なスポーツとなっています。この状況を打破するために前会長は、『する』だけでなく、『見る』という要素を高めることでファン層の拡大をめざしていました。社業との連携を試みた結果、東京五輪セーリング競技の観戦用として洋上に長さ50m超のワイドビジョンを設置し、最新の通信技術を実証する場としてパブリックビューイングを実現できました。こうした流れの中で協会にも深く関わるようになり、20年に会長職を引き受けました。私自身も大学生時代にウインドに熱を上げたひとり。業界の発展とともに、海の楽しさや自然の魅力を多くの人に伝えたいという思いがあります」
──W杯を津久井浜海岸で開催する意義は何でしょう。
「ウインドサーフィンはイノベーション(技術革新)とともにあるスポーツです。ボードやセイルは日進月歩で進化を遂げており、スピードも乗りやすさも格段に向上しています。かつてはこれらの開発を多くの国産メーカーが手掛けていました。ユーザーが増えれば、市場は活性化し、産業として復活させることができます。W杯はウインドサーフィンを知らない人たちにアピールできる絶好の機会。競技、レジャーともに復権させたいと考えています」
──横須賀・三浦の両市は、ウインドサーフィンやマリンスポーツを軸にしたまちづくりの可能性を模索しています。
「地域の個性が求められる時代です。都心から近距離でリゾート感を味わえる三浦半島は大きなアドバンテージがあります。いつもの職場を離れ、旅先や自然を感じられる場所で過ごしながら仕事も余暇も満喫する『ワーケーション』が注目を集めています。その楽しみの方のひとつとしてウインドサーフィンを位置付ける。そんな発信もできそうです」
──JWAとNTT社の連携で、選手の競技力向上をデジタル技術を活用して実現する新しい試みに着手しています。
「うまく言葉にできないコツ(・・)のようなものをデータ解析し、特有の身体感覚の正体を掴もうとする研究です。体感のデータ化とも言えます。海外選手とのスピードの差はどういった条件で生まれるのかなどを突き止めることで、効率的に技術力アップが図れます。NTTでは、人間を理解することでサービスの向上に努めています。例えば年齢を重ねて肉体が衰えたとき、現役時代の身体の動きを仮想空間で再現することができれば精神的に豊かでいられます。研究の果実をこうした領域へと社会実装させることが最終的な目的。津久井浜海岸で選手がサンプルデータを集め、YRPにある研究所で研究開発を進めています」
──横須賀は故郷ですね。
「地元の海でW杯の運営に携わり、研究者として勤務した職場でウインドサーフィンを取り入れた身体知研究がスタートするなど、不思議なめぐり合わせを感じます。どちらも全力で取り組むことで地域貢献していきます」
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