横須賀市の上地克明市長は2月10日、2023年度当初予算案を発表した。市民サービスの提供や行政運営の経費となる一般会計は1610億5千万円、前年度比で36億円増額(伸率2・3%)となり、過去3番目の規模となった。同月14日に開会した市議会に提出され、審査が行われている。
歳出では、高齢化の進展による医療費や介護保険の負担増に約8億円、子育て支援に約4億円を充当。目玉のひとつである小児医療費の無償化は、今年の10月から現行で中学3年生までとしている対象年齢を18歳の年度末まで拡大する。横須賀中央の若松町1丁目地区と追浜地区の再開発事業の具体化に伴う補助金として約10億円を計上。これらが増加要因となった。原油高騰に伴う市施設の光熱費も膨らんでおり、約6億円を盛り込んだ。
歳入では、市税収入と消費税交付金でそれぞれ約8億円の増加。新型コロナの感染症の法律上の位置付けが5月から5類に移行することで、経済活動の回復を見込むが、コロナ以前の水準までには達していないという。
一般会計の財源不足を補う財政調整基金からの取り崩しは46億9千万円で前年度よりも8億4千万円の増。これにより、23年度末の残高の見込みは61億9千万円となる。
上地市長は、同日に開かれた記者会見で新年度予算の命名を求められると「コロナからの横須賀再興予算」と発言。「これまでコロナ対応だけでなく、未来に向けた投資も行ってきた。その取り組みの成果を表面化、顕在化させる編成だ」と力を込めた。22年度は、スポーツ・エンタメ事業に注力。自転車競技のBMX大会やダンスコンテスト、久里浜に完成したサッカーJ1横浜F・マリノスの新練習場など、地域活性に向けた仕掛けづくりに取り組んできた。集客と都市イメージの向上で得た経済の果実を福祉の分野に還元していく独自のプランをより具体化させる考えだ。
目新しいところでは、情報発信ツールとして注目を集める「メタバース」の活用も打ち出す。観光や教育の分野などに取り入れ、自治体としての先進性をアピールする。
※メタバース/インターネット上の仮想空間・空間サービス
「新しいアイデンティティー必要」市長会見で上地市長
この日の会見で上地市長は、横須賀が抱える課題である人口減少について自らの考えを述べた。
主な要因として「交通結節点でない」「就業の場がない」「都市イメージの悪さ」「新設住宅着工戸数の少なさ」を挙げ、半島という地政学的に不利な部分があることも示した。
軍都として栄え、これを引き継ぐ形で産業分野を中心に経済発展を遂げたが、時代が移り変わり、何も残っていない状況を指摘。平地面積が少ないために、谷戸や丘陵地に住居を構えた人たちが老齢化し、若者が都心へと向かう悪循環が続いている現状を嘆いた。
上地市長は、こうした課題に対して解決に向けた施策を打っていることも説明した。
国道357号の延伸に伴う新ルートや追浜駅のバスターミナル誘致で交通結節点を設けることやヒト・モノの往来を活発化させるフェリー航路の開設を話した。基地の街のグレーなイメージの払拭と新しいアイデンティティー醸成の必要性にも言及。「音楽・スポーツ・エンタメ事業など経済とマインドの両面で横須賀が豊かであることの発信を通じて、人を呼び込んでいく」と話した。
子育てサービスなどを自治体間で競い合う風潮には疑問を呈し、横須賀の魅力を磨き上げて総合的に選ばれる街をめざす考えを述べた。
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