日本の植物分類学の礎を築き、「植物学の父」といわれる牧野富太郎氏(1862〜1957)が採集した植物標本を通して、標本の魅力や価値を伝える企画展が、深田台の横須賀市自然・人文博物館で開かれている。三浦半島内でも多くの新種を発見し、同館の初代植物担当学芸員とも親交の深かった同氏の功績に迫る試み。
同展示は、牧野富太郎氏をモデルにしたNHK連続テレビ小説「らんまん」が、4月から放送開始となるのに合わせて、同館の植物担当学芸員である山本薫さんを中心に企画された。「牧野富太郎がみつめた植物―植物標本が語るもの―」と銘打ち、牧野氏の生い立ちや植物学者としての歩みを解説するパネル、明治から昭和にかけて三浦半島を含む神奈川県内で採集された植物標本(20点以上)、師弟関係だった大谷茂氏(同館初代植物担当学芸員)にあてた直筆の手紙や原稿を初公開。近年の技術革新によって植物本来の色を極力保持した野菜や果物の美しい標本なども並ぶ。
高知県出身の牧野氏は、独学で植物の知識を身につけ、1889年に新種のヤマトグサを発表し、日本人として国内で初めて学名をつけた。94年の生涯で採集した標本数は約40万点、命名した新種や新品種は約1500種類以上とされる。
全国を精力的に回るなかで、同氏は神奈川県内で多くの植物を採集・調査していた記録が残り、三浦半島でも新種の発見や命名を行っている。
会期は6月18日(日)まで。午前9時から午後5時、月曜休館。資料保全のため、期間中展示替えあり。入館無料。5月3日(水)午後1時から、展示解説も予定されている。
詳細は同館【電話】046・824・3688
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■学芸員・山本さんの話
海と山、半島独自の多様性のある横須賀。牧野博士もかつて田浦泉町や大楠山などを訪れました。今回展示した標本には、1934年に久里浜で採集された「イワダレソウ」という海浜植物もあります。埋め立てなどにより今の久里浜ではほぼ見られませんが、植物標本があることで今から約90年前には自生し、時代とともに分布が変化したことが分かります。
また、ペリー艦隊の乗組員が市内で採集した植物を米国に持ち帰ったり、横須賀製鉄所の医師で植物研究家でもあったサヴァティエが調査を行うなど、横須賀には植物研究の歴史があります。
当館所蔵の植物標本は地域の宝。展示を通して自然に目を向けるきっかけになれば嬉しいです。
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