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横須賀・三浦版 公開:2023年4月21日 エリアトップへ

白鸚さん主演『ラ・マンチャの男』 不朽の名作、54年の歴史に幕 よこすか芸術劇場で花道飾る

文化

公開:2023年4月21日

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半世紀以上にわたり主演を務めてきた松本白鸚さん(写真左/東宝演劇部提供)
半世紀以上にわたり主演を務めてきた松本白鸚さん(写真左/東宝演劇部提供)

 1969年の日本初演以来、歌舞伎俳優の二代目松本白鸚さんが単独主演してきたミュージカル『ラ・マンチャの男』。そのファイナル公演が、4月24日(月)までよこすか芸術劇場(本町)で行われている。通算上演回数1300超を誇る不朽の名作は、同公演で54年の歴史に幕を下ろす。なぜ、全国の劇場の中から横須賀が作品の”最終公演の地”に選ばれたのか-。舞台関係者らに話を聞くと、音響や舞台機構といった優れた施設設備以外にも奇しき巡り合わせがあった。

 『ラ・マンチャの男』は、ミゲール・デ・セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』を原作としたミュージカル。65年にアメリカで上演され、ブロードウェイに進出した4年後、白鸚さん(当時/市川染五郎)の主演で日本初演を果たした。

 物語の舞台は、16世紀末のスペイン。教会を冒涜した罪の嫌疑により、セルバンテス(松本白鸚)は従僕とともに投獄される。地下牢では囚人たちが2人を取り囲み、牢名主(上條恒彦)は裁判にかけようとする。慌てたセルバンテスは即興劇による申し開きを思いつき、囚人全員に役を与えて”遍歴の騎士”、ドン・キホーテの物語の再現を始める。すると、巻き込まれた囚人たちは次第に心を動かされていく――。

  ◇  ◇  ◇  ◇

 同作は2022年2月、「ファイナル公演」と銘打って日生劇場(東京都)で開幕。惜しまれながら半世紀以上にわたる歴史に終止符を打つ”はずだった”。しかし、会期途中で新型コロナウイルスの感染拡大によって中止を決断。全25公演のうち、実施できたのはわずか7公演で、大千穐楽を迎えることも叶わなかったという。

 キャスト、制作スタッフ、ファンも含めて「このままでは終われないという気持ちだった」と話すのは、東宝(株)演劇部ゼネラルマネージャーの米久保宏さん。一時は諦めかけたファイナル公演。復活を果たすため、スケジュール調整や会場の確保に奔走し、その中で最初に候補として名が挙がったのが、「よこすか芸術劇場」だった。

 『細雪』(09年)、『ミス・サイゴン』(14年)、『ジャージー・ボーイズ』(22年)など、これまでも東宝作品の公演実績を持つ同劇場。「上演できればどこでも良いという訳ではない。ホームのようなこの劇場ならば、作品の意義もきっと見い出してくれると思った」

質の高い舞台環境

 決め手はそれだけではなかった。4層のバルコニー席が囲む馬蹄形の客席、国内屈指と称される音響・照明装置など質の高い環境が整う。唯一、初演から作品を支え続ける演出スーパーバイザーの宮崎紀夫さんも「本格オペラハウス形式の優雅な雰囲気もすばらしい」と賞賛する。「舞台の広さや高さ、オーケストラピット、まるで『ラ・マンチャの男』の(セットの)ためにあるかのようにしっくりくる。ここを選んで間違いなかった」と2人は頷いた。

 ファイナル公演の会場として”指名”された同劇場副館長の天沼ひかるさんも、「今年開館29年を迎えるが、こんな機会があるとは思わなかった。とても感慨深い」と喜びを語った。

 昨夏、白鸚さんの傘寿の誕生日に上演決定が正式発表され、チケットは即日完売。名作を見納めようと、初日の4月14日から全国のファンが訪れている。

横須賀との奇縁

 19年に行われた「松本幸四郎改め二代目松本白鸚、市川染五郎改め十代目松本幸四郎襲名披露巡業」の千穐楽も、よこすか芸術劇場だったことに「縁を感じる」と宮崎さん。「横須賀と言えば、小泉純一郎氏も何度か見に来てくれた」と懐かしむ。

 じつは小泉氏、同作のファンであると公言。通算上演1000回、1200回達成公演などたびたび観劇している。またある時は、郵政民営化に関する特別委員会の質疑で、委員からのドン・キホーテに擬した皮肉に対しても、劇中歌『見果てぬ夢』の一節、「夢は稔り難く/敵は数多なりとも/我は勇みて行かん」になぞらえて、民営化実現の意欲を熱弁したという逸話も残っている。

 また、同公演は横須賀市(後援)と京浜急行電鉄(株)(協力)がバックアップ。京急の車内や駅でのポスター掲示など、「最後にふさわしい花道を作っていただいた」と米久保さん。「こみ上げてくるものがある。横須賀で歴史の1ページが刻まれる」。白鸚さんとともに歩んできた宮崎さんも無事に幕が下りる瞬間を見守る。

 当日券は各公演前日の午後3時から電話予約で受付(座席種・枚数は各回異なる)。予定枚数に達し次第終了となる。当日券専用ダイヤル【電話】0570・035・061

不朽の名作、54年の歴史に幕-画像2

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