横須賀市は児童扶養手当受給世帯の経済的負担軽減を目的に、規格外野菜を始めとした食糧品提供などの「子育て家庭食糧支援事業」に民間企業の「ネッスー」らと連携して取り組んでいる。企業版ふるさと納税を原資に、今年3月に初めて実施された。ネッスーが持つスキームを「画期的」と市は評価。食品ロス削減と子育て支援を同時に行い、地域課題解決をめざす。
市の2023年度事業として、3月に行われた「子育て家庭食糧支援事業」。財源は総合包装メーカーの「(株)トーモク」(東京都)から寄付を受けた500万円の企業版ふるさと納税が充当された。おもな内容は、【1】市内11カ所にあるこども食堂に対する野菜や果物・加工食品等の提供【2】児童扶養手当受給世帯のうち、希望世帯への食材セットの個別配送【3】農業収穫体験の機会の提供。大きさや形などが規格に適さず廃棄される地場の野菜を経済的に困窮する子育て世帯に届けて消費してもらう。
3月実施分の食糧配送の対象者は、23年12月度の児童扶養手当受給世帯約2700世帯。案内送付後、約1000世帯から申し込みがあったという。横須賀産キャベツを含む野菜、レトルト食品、調味料、菓子、缶詰など常温保存可能な食品の詰め合わせで、「野菜多めセット」やミルク・離乳食などが入った「乳幼児セット」も用意して市民の希望に応じた。
自宅に個別配送
市と連携するのは、子ども支援のベンチャー企業で、フードバンク兼業型ネットスーパーを展開する「ネッスー(株)」(東京都)。規格外野菜のフードロス削減と食糧支援を結びつけ、農家や農協、市場卸売事業者と協力して支援を必要とする世帯や団体に届ける独自のネットワークを持つ。「個別配送」による食糧支援が強みで、仕事や育児で買い物の時間がない保護者らに代わって食品を同社が配送している。
全国初の取り組みとして、22年には三浦市農業協同組合の協力のもと、出荷調整や規格外を理由に市場流通されなかったダイコンを活用した実証実験を実施。東京都中央卸売市場を介して都内や愛知・大阪など約3万カ所に届けられた。
”横須賀モデル”として市内では、「よこすか葉山農業協同組合」と「横須賀青果物(株)」なども参画している。
賛同募り事業継続
自然とのふれあいや学び、食育などの観点から農業収穫体験の機会も提供した。今回は抽選で300人を津久井浜観光農園のいちご狩りに招待し、参加者は旬の味を楽しんだ。
物価高騰の影響で家計が急変する子育て世帯も多いことから、市こども家庭支援課は24年度の事業継続について、「年3回程度行いたい」と話す。しかし、「事業に関わる費用は企業版ふるさと納税による寄付に頼らざるを得ない状況」だとして、持続的な運営をめざし賛同企業を随時募っていく。
篤志に感謝状
企業版ふるさと納税の寄付を受けて、市からトーモクへ感謝状が贈られた。4月4日に執行役員の佐藤晃一さん=写真右=が市役所を訪問し、上地克明市長に寄付に至った経緯などを話した。
佐藤さんは「同じ仕組みが広がって、世の中全体で支え合っていければ嬉しい」と述べ、上地市長も「食糧の無駄をなくし、子育て支援にもなる。『誰も一人にさせないまち』を掲げる横須賀にぴったりで、ありがたいお話だった」と謝意を示した。
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