OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第2回 プロローグ(倉渕編【2】)文・写真 藤野浩章
後に大隈(おおくま)重信は「明治の近代化はほとんど小栗上野介(こうずけのすけ)の構想の模倣に過ぎない」と振り返ったという。
しかし今私たちが"常識"としているのは「明治維新によって日本は近代化を遂げた」という事で、そこにオグリの名前はまず登場しない。
何より、これだけの功績を残しながら、なぜ理不尽な最期を迎えることになったのだろうか。「西軍(新政府軍)は問答無用で小栗と家臣を斬首した上に、家財道具を全部売り払って軍資金にしてしまったのです」と東善(とうぜん)寺の村上泰賢(たいけん)住職は強調する。それくらい、新政府にとって小栗の存在は邪魔だったということだろう。
「正しい歴史を知ってほしい」と長年精力的に活動する村上さんは先頃「小栗かるた」を作った。44枚の札を順に追うと彼の生涯やエピソードが分かる仕組みで、裏には詳細な解説も。絵も実に秀逸なので、小栗ファンだけでなく、子供たちも遊びを通じて偉人の功績を知ることができるだろう。箱入りとブックタイプの2種類がある(問合せは東善寺へ)。ほぼ手弁当で活動を続ける村上さんだが、裏を返せば、こうして伝え続けていかないと、歴史の闇に埋もれてしまうということ。さまざまな方向から歴史を見ることの大切さをつくづく実感する。
作者の大島はあとがきで「歴史は百年を経なければ定まらないとはよくいわれることだが、小栗はどうだろうか。正当な評価が下されたとはとてもいえないように思われる」と語っている。それからさらに30年。状況は変わっただろうか。
その小栗の足跡を、まずは幼少期から辿(たど)っていくことにする。
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