高校の体育教師で桜が丘に暮らし、2018年に亡くなった田原貞儀さんの一生をモチーフにした絵本『小さなおうちのお星さま』が6月28日(金)に発売される。手掛けたのは貞儀さんの孫娘であるタムラユイさんとアラキユリさんのふたり。祖父とのエピソードを温かい文章と透明感のある柔らかいタッチの絵で表情豊かに描いている。
絵本を制作したふたりは長野県在住。1994年生まれのタムラユイさんがストーリーと絵を担当し、03年生まれのアラキユリさんが絵とレイアウトを担当した。
2人は幼少期から祖父のいる横須賀を頻繁に訪れており、手先が器用だった貞儀さんに絵や手紙、紙芝居づくりなどを教わったという。
物語は、男の子の赤ちゃんが流れ星となって落ちてくるところから始まる。少年は身体が弱かったため兵隊を志願したが叶わず、悔しい思いをする。そこから勉強に励み身体を鍛えて体育教師に。結婚をして3人の娘の親となり、やがて老年を迎える。寄り添って支えようとする旅人が現れるも、自分の道を進めと背中を押して、遠くから無事を祈る毎日─。
上手くいかないことや辛いことも含めて幸せな人生を振り返り、「お星さま」になるまでを静かな筆致で描いている。
タムラさんが絵本を出版するのは今回が初めて。以前は保健師を務めていたこともあり、様々な世代や家族と接する機会から「それぞれのファミリーヒストリーに興味を持つようになった」と話す。祖父が戦時中に抱いていた感情や経験を家族のヒストリーとして繋げていきたいとの思いもあり、絵本制作の費用をクラウドファンディングで調達するなどして完成させた。「自分にとっての『お星さま』(憧れの人、大切な人)を思い浮かべて読んで欲しい」とタムラさん。
定価1320円で文教堂横須賀MORE,S店ほか全国の書店、オンラインで購入可。
田原貞儀さん(1930年生)/戦中は空軍のパイロットを志願したが視力の問題で不合格に。父と兄は出兵しており、複雑な感情を抱えていたが、年齢を重ねるにつれて真逆の考えとなる。高校の体育教師。太鼓、尺八、太極拳、菊など多岐にわたる趣味を楽しむ。2018年に老衰で死去。享年87歳
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