横須賀美術館で7月1日、同館を設計した建築家で、3月に「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を受賞した山本理顕(りけん)さん(79)による解説ツアーが開かれた。山本さん自ら関係者や来場者を先導し、設計時の舞台裏や作品に込めた思いを語った。
同館は横須賀市制100周年を記念し、2007年に開館。設計者の選定は当時としては全国で初めて、設計案ではなく建築家の資質や実績で選ぶ「QBS(資質評価)方式」で決まった。
山本さんは「山本の思想そのものを評価してもらえたので非常に印象深い」と代表作として知られる同館への思い入れを伝えた。設計に当たっては市やキュレーターと綿密な打ち合わせを重ねたといい、「特別な人のためだけではなく、外に開かれた美術館を目指した」と回顧した。
建物は鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)で地下2階、地上2階建。潮風の影響を避けるため、二重壁を採用。外側は耐久性のあるガラスを用い、内部の随所に開けた丸穴が自然光を取り込み、特徴的な空間を作り出している。来館者に向け山本さんは「丸窓の外を船や人が通ると絵画のようにも見える。そういう色々な仕掛けを楽しんでほしい」と話した。
ツアー後には同賞を受賞したことに触れ、「公共建築は常に政治的で建築家の思想が問われる。賞をいただいて、私の意図や思想を皆さんや次代の建築家に伝えられる機会が得られたことはありがたい」と述べた。
同館にはこれまで延べ210万人以上が来館。この日、市は山本さんの同賞受賞を記念し同館を無料開放した。
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