建築物から地域の歴史を学ぶ市民グループ「横須賀建築探偵団」の吉田秀樹さんがこのほど、横須賀市内に点在している、崖などの崩壊を防ぐ擁壁の1つである「ブラフ積み」に関する研究をまとめた冊子を刊行した。自ら市内を歩き回ってまとめた労作で、「ブラフ積みは現代では減少の一途。歴史を今に伝える構造物を知るきっかけにしてほしい」と話している。
ブラフ積みは、擁壁などに使用される石垣の長辺と短辺が交互に並んでいる積み方。横須賀市では谷戸地域を中心に明治時代初期頃から発達したとされるが、近年では建築基準法の観点から採用されず、その数を減らしているという。
吉田さんはこれまで、市内の港町を見下ろせる撮影スポットを「海と船が見える坂道マップ」として1冊にまとめるなど、横須賀市の歴史や魅力を研究。その過程でブラフ積みに興味を惹かれ、調査を開始した。
約160年前、横須賀製鉄所が建設されて以来、軍港都市として栄えてきた横須賀市はこれに伴い人口も増加。住宅地開発が山間部にもおよび、その過程でブラフ積みが使用されてきた歴史がある。そのため市内では汐入の谷戸地域や上町などに多いほか、猿島や千代ヶ崎砲台跡などの軍事遺構でも見られる。
横浜市山手地区では、市が歴史的建造物に認定する動きが広がっている。「山手地区都市景観形成ガイドライン」が定められ、地域資源として保全に向けた機運も高まっているという。
生い立ち解明
今回刊行した冊子は「横須賀におけるブラフ積み擁壁に関する研究」と巻末資料、刷新となる「横須賀海と船が見える坂道」の3冊。横須賀建築探偵団のホームページ上に掲載していたものをまとめたもので、地域の歴史的背景から市内に点在するブラフ積みの生い立ちの解明に挑んでいる。ほかにも他都市での特徴や石材質にいたるまで、自身の足で歩いて得た研究成果を事細かに記した。今後は市図書館などへの寄贈も考えているといい、「他市にはあまりない構造物で、市の歴史が詰まっている。資料として残していかないといけない」と歴史遺産の保存を呼び掛けた。
冊子は巻末資料と2冊セットで1500円。「海と船が見える坂道」は500円。購入希望は吉田さん【メール】yoshidayo237@yahoo.co.jpまで。
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