店舗基盤に密着度高める
中小零細企業を支える大きな役割を持ち、地域経済や地方創生のけん引役を担う「かながわ信用金庫」(本部=横須賀市小川町)の理事長が16年ぶりに交代した。ICTの普及やDX化など金融機関を取り巻く環境は大きく変化しており、時代に即応した新しい金融機関の形をつくり出すという。平松廣司会長にトップ交代の決断と全国信用金庫協会会長就任の意気込みを聞いた。
──理事長職を退き、会長に就いた。
「『かながわ信用金庫』に名称変更して丸10年。この間に念願だった県央の綾瀬に出店し、横浜関内に営業拠点となる横浜営業部も開設。預金量は1兆円を超え、強固な経営基盤の確立とともにネームバリューの向上が図れた。16年前の理事長就任時に描いた経営戦略の青写真を7〜8割実現できた。信用金庫は非営利法人の協同組織であるが、企業と同様に成長がなければ存続できない。DX化などへの対応も不可欠。組織として適切な新陳代謝が必要であり、その時期だと判断した」
──新理事長に高瀨清孝氏を起用した。
「地域に精通し、営業に長けた人物。人から好かれる性格で取引先などからの信頼も厚い。金庫の目下の課題は基盤の拡充だ。個人も法人も一つでも多くの取引先を増やすこと。これを実現するリーダーとして適任であると考え、託すことにした」
──新型コロナを経て企業も社会も大きく変化した。
「(コロナ禍では)経済活動のストップや新しい生活様式への対応など難しい部分もあったが、地元企業のサポートに積極的に乗り出したことで信頼関係がより深まった。伴走型支援も経験と実績を積み上げることにつながり、金庫としての強さが増したと感じている。コロナの試練が信用金庫のサービスを新しい段階に引き上げた」
──物価高に人手不足と地域経済を取り巻く環境は依然として厳しい。横須賀・三浦は人口減少にも直面している。
「金融機関も同じ。そうした条件の中でしのぎを削っている。経営判断として合理化や効率化を推し進めることは一つの方策だが、当金庫は『店舗なくして地域を守ることはできない』というスタンス。信用金庫は地域のオアシスのような役割を持っている。既存店の撤退は考えていない。地域の金融機関として踏ん張りどころだ。その一方で横浜・藤沢といった成長が見込めるエリア戦略を同時に進めていく。毎年50人程度を新卒採用しており、人材への投資も重要視している」
──新理事長に期待することは。
「高瀨理事長は私が唱えた『強くてやさしい信用金庫』のスローガンを継承していくことを表明してくれた。この言葉の意味は深い。全職員への理解と浸透を目指してほしい」
──全国信用金庫協会の会長に就任した。
「全国254ある信用金庫の地位向上と中小零細企業支援のための要望などを政府や関係機関に行う組織。責任ある地位だ。全国には地銀に負けない取引量を誇る都市部の金庫があれば、小規模ながら地域との良好関係を築いて存在感を示している地方の金庫もある。日本経済を支えているのは国内全企業の99%を占める中小零細企業だ。融資だけでなく、経営改善や事業再⽣、事業承継が重要性を増しており、サポートを行う人材の確保と育成を信用金庫全体で取り組む必要性を感じている。地域や顧客に密着したサービスの提供こそが信用金庫の存在意義。営業担当がオートバイを走らせて担当エリアをくまなく回り、フェイス・トゥ・フェイスの対応していく原点のスタイルだ。信用金庫のあるべき姿を説いていく伝道師として全国各地に出向き、信用金庫のブランド力アップに全力で取り組んでいく。現地で見聞きした事例などは組織の力を高めることに活用したい」
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