きょう10月4日から三浦市内2会場で作品展「みえてきた!ヤマダヨシオ展」を開催する 山田 芳央さん 三浦市三崎在住 76歳
「三浦の円空」ここにあり
○…「お前、何になりてぇんだ」。アトリエに置かれた巨大な流木に語り掛ける。じっと見つめると木目や節が神仏の表情に「見えてきた」。眠る形をすくい取るようにノミを振るい、掘り起こしていく。彫り過ぎず、削り過ぎず。路傍の石や木の根、布切れにも命を吹き込み、新たな価値を生み出すのが自らの真骨頂。「無駄なく使う。料理も、作品も」。確たる信念が口をついた。
○…「雷に打たれたようだった」。独学ながら彫刻歴は40年以上。あるとき、デパートの展覧会で円空仏を観て衝撃を受けた。元々仏像は好きだったが、流木や朽ちた木で荒々しく彫られた存在感に圧倒され、「こんな彫刻があるのか」。権力者のためではなく、全国を行脚し、貧困や飢餓に苦しむ土地の民のために祈りを込めてノミを振るう。仏像制作の真髄に触れた思いがして自らも嗜むように。以来、円空は心の師。素材と対話し「円空だったらどうするか」と自問を繰り返しながら制作に向き合う。
○…父はかつて日本一とうたわれたマグロ漁師だった。幼少の頃、船酔いする姿に「お前は漁師に向かない」と”三行半”を突き付けられ、料理の道に。飲食店を渡り歩いて修行を重ね、23歳のとき、くろば亭を開店した。「無駄なく命を使う」は当初からの信条。骨や皮、内臓など余すことなく活用し、うまく食わせることにかけては右に出る者はいないと自負する。息子と孫に店を任せ一線からは退いたが、その精神は今も健在だ。
○…歩みを止めない生き様はマグロの生態にもどこか重なる。病を抱え昨年は死の淵をさ迷ったが、再び創作の場に帰ってきた。素材の声を聴き、形に。造ることに全精力を傾け、食べる人、観る人に全ては託す。迷いのない美学が光った。
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