発達障害児を育てる保護者らを対象にした学びの場「こども禅大学」を主宰する 大竹 稽(けい)さん 三浦市南下浦町金田在住 54歳
心ほぐす禅の学び舎
○…「発達障害は特性の一つに過ぎない」。多くの人が集団行動の可否やテストの成績でその人を判断してしまう。そのため、わが子の将来を憂いてしまう保護者も少なくない。「子どもが幸せになるには保護者も幸せでなければならない」。神奈川県内各所の寺院で実施する「こども禅大学」には、そんな思いが詰まっている。
○…愛知県出身。中学生の時、叔父ががんで早逝。医師を志し、名古屋大や慶應義塾大などの医学部を転々とした。しかしある時、医者は命を救えるが、人生までは救えないと気付く。その後、予備校の講師を10年間ほど務めたある日、教え子の自殺の報せが飛び込んできた。「もう少し話し相手になれたのでは」。自責の念に駆られ、哲学の道へ進むことを決意。36歳で再び大学へ入学し学問を深めた。
○…その後、哲学者・教育者として執筆や講演、寺子屋活動を続けてきた。自身の娘が5歳の時、物事への強いこだわり、対人関係が苦手といった特徴がある自閉スペクトラム症(ASD)と診断された。しかしショックを受ける妻の横でワクワクが止まらなかった。「発達障害の子どもとお母さんの支援に身命を賭すことが使命」だと直感したから。
○…ひとたび当事者になると子どもを取り巻く教育環境に潜む課題が見えてきた。人によって成長速度が異なる一方で一斉に学年は上がる。上がった先で取りこぼされ、いわば「落ちこぼれ」のレッテルが貼られてしまう。「教育現場という一つのワクに当てはめる必要はない。一人ひとりの特性にあった学習の場を提供し、その保護者の心のケアも出来れば」。自由を最重要事項とする「禅」の教えをもって悩める人々の心をほぐしていく。
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