新1万円札の肖像となった渋沢栄一を知る講演会が11月30日、横須賀開国史研究会の主催で開かれた。講師を務めたのは、渋沢の功績や思想を後世に伝える活動を精力的に行っているかながわ信用金庫会長の平松廣司氏。会場のヨコスカ・ベイサイド・ポケットに集まった約180人の聴衆が熱心に耳を傾けた。
渋沢は日本初の銀行である「第一国立銀行」をはじめ、500余の企業の設立に関わったことから「近代日本経済の父」と称される。600以上の社会福祉事業や教育に携わったことでも知られ、社会企業家の先駆者として近年、再評価されている。
講演のテーマは「歴史から学ぶ企業経営」。渋沢と同時代に生きたタイプの異なる起業家の考え方や行動との対比で渋沢の経営的本質に迫った。
多くの人から知恵と資金を集めて事業を実現させていく渋沢に対して、
独裁主義と利益重視を貫いて三菱を率いた岩崎弥太郎。時代の動きを見抜く慧眼の持ち主で乾物屋から鉄砲商として成功を収めた大倉喜八郎。両替店を営み通貨取引で才覚を発揮して財閥を築いた
安田善次郎の3人の成功者を例示。「政治や軍事力でなく、経済で社会全体の反映を目指したのが渋沢だ」と説明した。
平松氏は、利潤の追求一辺倒ではなく、公益重視を当時から掲げるなど、現代の企業経営にも繋がる渋沢の先見性に着目。市場経済の中で取り残されてしまう弱者の救済やエリートの育成ではなく、現場を支える中間層を育てる教育的視点の高さを称えた。日米関係の悪化を両国の子どもたちによる人形交換で融和を図る民間外交など、柔軟な発想の持ち主であることも伝えた。
開国史研究会の山本詔一会長との対談もあり、渋沢と横須賀との関わりにも言及。明治31年開業の東京石川島造船所浦賀分工場(川間ドック)に関与していることから平松氏は「横須賀を訪れている可能性は高いのではないか」と話した。
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