戦後の裏面史として、あまり語られることのない占領軍兵士と日本人女性の間に生まれた「混血児」(GIベビー)のその後に焦点を当てた本を出版するプロジェクトが動き出している。混乱の時代に翻弄されて生きた女性と子どもたちの実相に迫る内容だ。
本の制作に乗り出しているのは、ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』(2021年)を手掛けた木川剛志監督。終戦後の横須賀で米国人と思われる父と日本人女性の母の間に生まれたGIベビー、木川洋子(バーバラ・マウントキャッスル)さんが、66年ぶりに日本を訪れて生き別れた母を探す旅を記録した作品だ。
洋子さんは母親の愛情を受けて育ったが、当時の世間の冷たい視線からか、5歳の時に横浜市の児童養護施設に預けられ、1953年に養子縁組で渡米することになる。洋子さんは母と交わした「必ず迎えに来るから」の約束の言葉を信じていたが、果たされることはなかった。
作品では、来日した洋子さんが記憶の欠片を集めるようにして、秋谷の生家や海岸、周辺の神社などを訪れて過去の自分と家族の姿に邂逅していく。この時代を知る地域住民らが登場して、洋子さんを囲んで思い出を語る場面もある。
木川監督は洋子さんを取材する中で、当時の横須賀には200人以上の無籍の混血児が存在していたことを知る。「望まない形での誕生も少なくなく、孤児になったケースや出産直後に乳児が遺棄されることもあったようだ」と木川さん。
今回出版をめざす本は、映画では描き切れなかった物語のほか、2019年に来日した洋子さんが、「いま何を思うか」を渡米して追加インタビューすることを計画している。同じ境遇にあった洋子さん以外の人たちを追った取材内容なども盛り込むという。制作費を捻出するために現在、クラウドファンディング(「モーションギャラリー」のサイト)を実施中。戦後80年の2025年8月の完成を目指している。
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