2024年は元日に発生した能登半島地震を受け、市町村を越えた防災面での連携や備蓄物資の拡充、重機を使用した土砂災害機動部隊の新設など、災害対策が進んだ年だった。横須賀・三浦の1年を紙面から振り返る。
1月▼3月
能登半島地区の被災者を支援する動きが横須賀・三浦両市で見られた。横須賀市では有志グループ「from Yokosuka」など、三浦市では市福祉課などが義援金の協力を呼び掛け。横須賀市の運送会社である夏島運輸(株)ら有志企業は、機動力を生かし全国から寄せられた支援品を被災地へ届けるプロジェクトを実施した。
少子化が進む両市では、小学校の統廃合などの動きが活発化した。横須賀市では、2025年春に統合する2校の校名が決定。田浦と馬堀が「長浦小学校」に、走水と馬堀は「馬堀小学校」になる。今年度をもって南下浦小学校と統合する剣崎小学校では、タイムカプセルを剱埼灯台へ封入する式典や打ち上げ花火を上げるプロジェクトなどが行われ、児童らの新たな門出を祝い、後押しする活動が広がった。
久里浜にある「横須賀火力発電所」を運営する「JERAパワー横須賀合同会社」は、施設内にスポーツ利用などが出来る市民解放エリアを創出することを発表。25年度の供用を目指す。
2月末には1972年の開館から長年にわたり親しまれてきた商業施設「横須賀プライム」が営業を終了。現在33階建ての複合ビルの建設が進んでいる。
三浦市では、旧三崎中学校跡地を含む城山地区が生まれ変わろうとしている。安田造船所のグループ企業である三浦地所が複合施設として整備することを発表した。
スポーツでは、三浦市天神町出身の新谷雄太朗さんが大相撲の春日野部屋に入門。横須賀市ではソフトボール県選抜の中学生女子4人が3月に行われた全国大会に出場。エースとして活躍した池上中の小野愛果選手は大会MVPに輝いた。
女子ラクロスの「聖地」となっている三浦市の潮風スポーツ公園では、来年1月から初のジュニア教室が開催される。日本代表選手らが指導を担当し、次世代の選手を育成したい考えだ。
4月▼6月
一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ神奈川県版ライドシェア「かなライド@みうら」が4月17日から実証実験がスタート。市は当初、いずれ民間事業者に実施主体を移し本格導入する予定だったが、採算不透明で本格導入を「試行」に切り替えた。
旧南下浦市民センター跡地で整備を進めてきた複合施設「チェルseaみうら」が6月にオープン。子育て世帯の転入促進・転出抑制のほか、定住促進を目的とした多世代交流拠点。共用部分ではイベント開催などで使用されている。
少子化・人口流出に歯止めをかける施策として横須賀市では、新婚世帯の定住を促進する補助金を4月から、三浦市では6月から受付を開始。生産年齢人口の増加と地域経済発展に期待が寄せられている。横須賀市では暮らしやすさや街の魅力を発信するサイト「Live in Yokosuka」が開設された。
横須賀商工会議所は、後継者不在の企業や店舗を第三者に事業承継していく取り組みをスタート。同商議所の特命職員でお笑い芸人の石橋尊久さんが店の魅力や事情を発信。希望者とのマッチングを目指していく。
7月▼9月
三浦半島4市1町(横須賀・鎌倉・逗子・三浦・葉山)が連携して、地球温暖化を防止するために脱炭素社会実現へ向けた取り組みをスタート。市民や中小企業を対象に太陽光発電パネルなどの購入補助を行うことで化石燃料の利用減少を狙う。
情報通信技術分野の研究機関などが集積する横須賀リサーチパーク(YRP)に診療放射線技師を養成する「中央医療大学(仮称)」が進出することが決まった。27年度の開校を目指す。
横須賀市田浦町にある「旧市営田浦月見台住宅」の再生が進み、市と連携して同地の活用を行う(株)エンジョイワークスが「店舗兼住宅」「住居専用」として賃貸入居者の募集を開始。すでに多数の申し込みがあるという。
三浦海岸海水浴場は今夏、海の家の開設を見送った。観光の一大コンテンツを失った現状に危機感を募らせた地元有志グループは、新たな試みとしてグルメイベントや集客を夕方にタイムシフトする施策を実施。三浦青年会議所は、秋の集客に主眼を置いたイベントを開催。1日で約8千人を呼び込むなど、海水浴場の新たな活用法を探る契機となった。
新型コロナウイルスの影響などで、5年ぶりの実施となった久里浜ペリー祭のフィナーレを飾った打ち上げ花火には約8万人が来場。過去最高の集客を記録した。
9月には自民党総裁選に小泉進次郎衆議院議員が出馬。地元の支援者らは同氏を模したフォトモザイクアートの掲出や、キャンペーン実施などで盛り立てた。憲政史上最も若い首相の誕生に期待が寄せられたが、3位で幕を閉じた。その後の衆院選では、新人で共産党の為壮稔氏と参政党の初鹿野裕樹氏を制し6回目の当選を果たした。
10月▼12月
旧日本軍の弾薬庫として使用されていた横須賀市の大矢部弾薬庫跡地を都市公園として整備するための事業者公募が始まった。新公園は「大矢部みどりの公園」と命名され、27年度以降の供用を目指す。
かねて名称を募集していたマグロの血合いの新ネームが「茜身」に決定。現在茜身を使った料理は三浦市内14〜15店舗で食べられる。
11月に入ると、世間を賑わした「左手のないサル」が三浦半島に長期滞在し、地域での話題となった。
横須賀市では重機を使用する復旧活動部隊「土砂災害機動部隊(LTF)」が横須賀市消防団内に発足。重機や活動敷材提供を軸とする協定が宇内建設(株)と市で締結された。
津久井浜海岸では、6回目となる「ANAウインドサーフィンワールドカップ横須賀・三浦大会」が開催。30カ国・100人のトップ選手が集い、海岸の賑わいを創出した。
2008年から15年まで米海軍横須賀基地に配備されていた米国の原子力空母「ジョージ・ワシントン」が9年半ぶりに再配備された。日米艦船観光ツアー「YOKOSUKA軍港めぐり」では計7便がすべて満席になるなど注目度の高さをうかがわせた。一方、市民団体による抗議活動が市内各所で展開されるなど歓迎と不安の声が交錯した。
12月には横須賀市と葉山町にまたがる「湘南国際村」の一角に、インターナショナルスクール「秋谷葉山国際学園(仮称)」が開校することが決まった。27年8月に開校される予定だ。
横須賀市発表の主要政策から
【能登半島地震被災地支援】能登半島を襲った震度7の大地震で甚大な被害を受けた人たちへの支援として、市役所本庁舎や各行政センターほかに募金箱を設置した。寄せられた善意を日本赤十字社を通じて被災地自治体に届けている。現地の復旧・復興のために市職員の派遣も行い、保健師チームや緊急消防援助隊、上下水道局が支援活動にあたった。派遣職員が現地で得た教訓を市の災害対策に役立てるという。
【安心・安全】巨大地震などへの備えとして、市は避難所備蓄の充実化を図った。断水の発生を想定して、携帯トイレなどの備蓄を拡充。全ての和式トイレを簡易的に洋式化するユニットも確保し、災害時のトイレ問題に対処する。避難所などで使用するテントや毛布の数を見直したほか、市営住宅の空室を活用した避難用住居も増やした。防犯対策のひとつとして、市民がランニングやウォーキングしながら街中を見守る「パトロール ランウォーク」を開始。「走る・歩く」といった行為を通じて地域の安全に貢献していくボランティア活動。空き巣や自動販売機荒らし、痴漢行為などの犯罪抑止に目を光らせる。想定を上回る登録者があり、700人超が専用Tシャツを着用してパトロールを行っている。
【まちづくり】市と住友重機械工業が、浦賀駅前周辺地区の活性化に向けた協定を締結した。市が所有する浦賀レンガドッグ周辺の土地と住友重機械工業が持つ浦賀駅前の土地の一体的な利活用の検討する。市は現在、同エリアの開発を手掛けるパートナー事業者を公募しており、来年7月までに決定して、市と住友重機械工業の3者で計画を具体化させる。2027年度以降の着工を目指している。
【自然環境】地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減をめざして、三浦半島の4市1町(横須賀市・鎌倉市・逗子市・三浦市・葉山町)と日本テレビは、連携して対策を講じていくことを発表。二酸化炭素の吸収源となる藻場の再生(ブルーカーボン)や磯焼け問題に対処する。
【DX推進】庁内業務の効率化と市民サービスの向上を目的にDXを推進している市は、生成AI(人工知能)の活用をもう一段高めている。市民の日常的な悩みの相談にウェブ上で応じるチャットボットの開発を進めており、誤った回答をわざと収集して、性能改善につなげる公開実験が話題となった。産学官の連携でAIを活用した認知症予防サービスの共同開発にも乗り出している。音声AIで会話するサービスで、市内の高齢者施設などで試験利用を行っている。
【健康・福祉】抗がん剤治療等の副作用で脱毛症状に悩み人への手当てとして、ウィッグの購入費用の助成を開始した。外見上の変化に対する不安を和らげ、就労や日常生活に影響が出ないようにする。
【音楽・スポーツ・エンターテインメント】若者に人気のアーバンスポーツの取り組みをもう一段加速させた。五輪種目のBMX競技と障害物を乗り越える体操の新種目「パルクール」は、昨年に続いて全日本クラスの大会を誘致。ストリーダンスは、世代別のコンテストなどを通じて、「ダンスの街」をアピールしている。仮想空間で世界中のユーザーと交流できる「メタバースヨコスカ」は、訪問者が18万人を突破。観光PRだけでなく、先端技術を積極活用する自治体の先進性も発信している。
【観光・集客促進】『鈴木敏夫とジブリ展』が横須賀美術館で開かれ、約17万人が観覧者が訪れて歴代最多記録を更新。市内の店舗などとコラボした周遊スタンプラリーも人気を呼び、経済効果を生んだ。西地区の交流拠点「長井海の手公園ソレイユの丘」は、年間来園者が100万人の大台を突破した。
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紙面から振り返るヨコスカ・ミウラ202412月20日 |
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