横須賀の歴史検証などをテーマに活動する「毛利塾」を主宰する 毛利 邦彦さん 横須賀市汐入町在住 77歳
「技術史」で育む郷土愛
○…「日本の近代化は横須賀から」。幕末に建設された横須賀製鉄所をはじめ、近代日本の工業化の礎となった横須賀を技術史の観点から掘り下げた調査・研究を精力的に行っている。先ごろ市内で開催した歴史パネル展では、終戦直後に米軍が夏島の航空技術廠(しょう)で撮影したとされる映像に残る巨大な風洞について情報提供を呼び掛け、多くの市民の関心を呼んだ。
○…汐入の開業医のもとに生まれ、大学卒業まで同地で暮らした。現在は歴史家としてのイメージが先行するが、電力関連のエンジニアと大学の客員教授という経歴を持つ。会社員時代にはオーストリアの火力発電技術の改良に中心となって取り組み、稼働で発生する酸性雨の原因物質を取り除くことに成功した。定年後に横須賀に戻り、技術の担い手が育った故郷の魅力を発信すべく現在の活動を開始した。
○…戦中の横須賀で特攻機「桜花」を設計した三木忠直が戦後、罪責の念に駆られ「技術の平和利用」に転じ0系新幹線を開発したエピソードに強い感銘を受ける。戦前に軍事産業で発展した背景から、その歴史を覆ってしまう向きもある中、「横須賀で培った技術が戦後の発展を支えたことを未来ある子どもたちに知ってほしい」と技術史から郷土愛を育む教育を提言する。
○…「横須賀の近代技術」に特化した調査・研究が少ない中、昨年は国の重要文化財である幕末のスチームハンマーがオランダ製ではなく英国製であることを発表し、従来の説を覆した。近年、横須賀製鉄所を建設したヴェルニーの子孫が横須賀に関連した著書を発刊したことを受け、同書を日本人向けに再編集する試みに意欲を見せる。後世へ地元の魅力を伝えていくため、研究の手は止めない。
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