近代化遺産を地盤工学の視点から調査・保全を続ける 正垣(しょうがき) 孝晴さん 横須賀市本町在住 71歳
歴史的価値を見つめ直す
○…国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の国内委員会が、文化遺産の保存や研究で優れた業績をあげた者を表彰する2024年度「日本イコモス賞」にこのほど選定された。東京湾の第三海堡などを含む日本の近代化遺産を地盤工学の視点から調査・保全を続けてきた一連の活動が評価された。「受賞内容だけでなく、研究に取り組む姿勢そのものを評価されたこともうれしかった」
○…名古屋大大学院を修了後、イリノイ大学での客員研究員、防衛大学校の教授などを務めてきた。近代化遺産などに焦点を当てた研究を始めたのは防衛大時代の10年ほど前。日本の防衛の要となり、果ては産業発展の礎となった軍事遺跡が今も多く残る横須賀に目を向けたことがきっかけだった。以来、国内外約60施設を巡り構造物の土台となる地盤の調査を実施。歴史的位置づけ、保存に向けた提言を行ってきた。
○…「消滅は時間の問題だ」。かつて首都防衛を目的に明治から大正期にかけて建造された東京湾海堡。中でも千葉県富津市沖にある第一海堡は波風などの影響で滑動や沈下が進み、近い将来、崩壊は免れない。「いまの状態を当時の技術者が見れば涙するだろう。技術史、学術的に見ても重要な文化財。対策を施し、後世に残していくことが私の責務」。信念があふれ出る。
○…19年に防衛大を停年退官してからは自身の知見を基にした講演活動から社会貢献活動、論文の執筆などを行う。4月から始動する第一海堡の保護推進を主眼に置いた日本イコモス内の委員会では舵取り役として参画。修復・保全に向けた行政への働きかけや市民への周知など東奔西走していく。
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