OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第42回 横須賀編【8】文・写真 藤野浩章
「ご一同、明日もせいぜい苦虫を噛(か)みつぶして頂きますぞ」(第六章)
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一八六五年一月、ヴェルニーは横浜港に降り立った。彼はさっそく横須賀を視察し、ひたすら設計図と見積もりの作成に没頭する。そして後日、幕府との正式な会合が催され、ついに小栗との対面を果たすのだ。
「それにしては若過ぎ、どことなく頼りなげに見える」というのが第一印象だったが、実際の建設計画を彼から聞かされると、小栗は「それがしの考えていた設備は全て網羅されており、規模も十分と思う」と感心したという。大小2基のドック、製鉄所や製鋼(せいこう)工場などを備え、ツーロンの3分の2の規模。完成まで4年をかけ、40人のフランス人と2千名の日本人労働者が必要という巨大プロジェクトだ。
そしてこの時、仏側から提示された建設費は「1年60万ドル、4年で総額240万ドル」――。これは一体どんな金額なのだろうか。
「二百四十万ドルとは百八十万両」と本書にあるが、当時の貨幣価値を測るのは本当に難しい。以前本連載で使った「1両=10万円」を用いれば、年間450億円で総計1800億円。案外それっぽい数字だが、日本側の予想よりも安かった。冒頭のセリフは、どんな提示額でもあえて渋い顔をするようにと小栗が幕臣に入れ知恵する場面だ。
いずれにせよ高額だが、この建設費を実際にどうやって捻出するか。財政難にあえぐ幕府がなぜ巨額な工費をかける決断ができたのだろうか。全ては勘定奉行・小栗の頭脳にかかっていた。
そしてこの決断が、彼と日本の運命を大きく変えていくことになる。
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