人生の最期に向けた希望をまとめる「終活」が定着しつつある中で、横須賀市では5月から、墓の所在地やエンディングノートの保管先などの本人意思を事前に市へ登録する事業を始める。「わたしの終活登録」と名づけ、もしもの時に、市を介して本人が指定した人に開示する仕組み。自治体による終活情報登録の事業は、全国でも珍しいという。
横須賀市がこうした事業に取り組む背景には、「身元が判明していても、引き取り手のない遺骨が増えている」という現状がある。親戚がいても関わりを拒否されることもあり、先立った身内の墓の所在地が周囲の誰も分からず「無縁」とならざるを得ない―というケースも見られる。
さらに、エンディングノート等に、生前契約している葬儀社や墓の場所などを書き連ねていても、保管場所を周囲が知る術がないと、それを尊重することもできない。「終活がブームだが、故人の意思が完遂できなければ意味がない。”死後の尊厳”を守ることができれば」と事業を手掛ける市福祉部自立支援係の北見万幸次長は話す。
「お墓はどこに」
市では、「終活情報登録伝達事業(わたしの終活登録)」の申請用紙を作成。本人の氏名・本籍・住所・生年月日、エンディングノートの保管場所・預け先、葬儀や遺品整理の生前契約先、墓の所在地など11項目を記入できる。市民であれば登録可能で、書面のみの管理となる。本人に万一のことがあった際、医療機関や消防・警察・福祉事務所と指定した人に市が開示する。お墓に関しては死後、納骨や墓参など本人が希望するすべての人に伝えられる。
同事業の基となったのは、2015年から始めた「エンディングプラン・サポート(ES)事業」だ。身寄りのない単身で低所得の高齢者を対象に、葬儀方法など事前意思を書面に残して市が見守るもので、現在は26人が登録している。「単身でなくても、高齢の親子や周囲との関わりが薄い人は増えている」と北見さん。ES事業に本来の対象以外の人から相談が相次いだことから、自由に終活情報を登録できる仕組みを新たに作った。
書面には、亡くなった後の家屋に関する相談について記入する欄もある。空き家の増加は、相続人の居場所が分からないなどの理由もあり、持ち主の意思を事前に明確にするという狙いもある。登録事業に関してはすでに市民から問い合わせもあり、「行政としてできる範囲で、現状の不安感を拭うことができれば」と話している。
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