夏の晩酌と言えば、ビールに枝豆――。食欲をそそる鮮やかな”緑色”に、お酒を飲まなくてもついつい手が伸びてしまうものだが、三浦半島の南側、津久井浜一帯が一大産地となっていることをご存知だろうか。
津久井浜の風を味方に
この地で枝豆の栽培が始まったのが、15年ほど前。もともと「三浦七草会」として連携していた津久井近隣の生産者グループが、品種の選定や栽培技術など共同の基準を設けた「三浦はねっ娘会」を結成し、地元でのブランド化を進めた。
「はねっこ」とは、三浦独特の土の呼び名で、「風で飛ばされた地面の泥」という意味。根付きが良く、なによりもここに吹く適度な風が、虫を付きにくくしてくれるという。「強すぎず、弱すぎず。いつも枝が揺れるくらいの風が良い」と岩崎ファームの岩崎重夫さん。霜が下りない温暖な気候も枝豆の栽培に最適だという。国内各地の産地より収穫時期が早いのも特徴。茶豆系の品種で、「香りと甘み・旨味が濃く、バランスが良い」と市場関係者からの評価も高いという。現在は、4戸の農家(岩崎ファーム・岡安園・原田農園・松原農園)で連携し、情報共有しながら品質安定に取り組んでいる。
鮮度キープに試行錯誤
採ったばかりの枝葉付きの枝豆が次々と運び込まれているのは、津久井にある岩崎さんの作業所。5月中旬から選別や洗浄・袋詰めの作業が始まっている。7月末ごろまで短期パートの手を借り、多い日は100人以上が従事する。
なぜこんなに人手が要るのか。商品の袋を開ければ分かるが、莢(さや)に数cmの枝が残っている。これを手作業で行っているからだ。機械で枝葉と莢を分別する生産者も多く、同ファームでも導入していた時期もあったが、「傷が付きやすく、鮮度もすぐ落ちてしまう。枝付きにして、すぐに冷蔵すれば旨味もキープできる」と岩崎泰樹さん。長年かけて辿り着いたこの”ひと手間”が、味や風味だけでなく商品価値を高めている。
今年は、例年よりも少し実りが早く、同会では約60万袋の出荷を見込む。ピークは6月中旬から1カ月間。首都圏・近隣の量販店で並ぶほか、近年では、ネット販売も強化。また、各農園で直売も行っている。
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「沸騰したお湯でゆでるのが基本。概ね3〜5分、茹で時間によって食感や旨味が変化するので、おいしい食べ方を追求してほしい」と岩崎さん。同グループでは、「はねっ娘」ブランドでにんにくも手掛ける。秋口からは、正月に向けた七草の準備に取り掛かっていくという。
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