京浜急行沿線のまちづくりに焦点をあてた「京急沿線の近現代史」を刊行した 小堀 聡さん 大津町出身 39歳
”中途半端”こそ横須賀の魅力
○…京浜急行電鉄120年の沿線史を1冊にまとめた。車輛のカラーを模した表紙は鉄道ファン向けかと思わせるが「幅広い方に読んでほしい」と微笑む。沿線各地の経済発展や生活を、京急電鉄を時に主役に、時に脇役にしながら書き上げた。
○…大津中から横須賀高校へ。京都大学、大阪大学大学院へと進み、卒業後は名古屋大学大学院で経済学の准教授として勤務する。研究者としての原点は高校3年の時、通っていた予備校の日本史の先生との出会いだ。政治や文化、歴史的事象には経済的な動きが影響を与えている、という考え方を知り「自分が学びたいのは経済史だ」と道を決めた。同書のような書き下ろしは初めてだが「私が学生の時によく足を運んでいた地元の大津書房という数坪しかない書店の存在を、企画者の方が知っていたことに運命を感じて」執筆を決めた。
○…「生まれ故郷について書くのは、さすがに力が入った」20世紀末を挟み人口減少に転じた横須賀の閉塞感や、砂浜の消えた馬堀海岸と残る逗子海岸の比較など、この地で育っているからこその視点も随所に散りばめられている。「18年間過ごしてきて抱いた疑問や違和感に対して、ひとまずの答えが出せた」と晴れやかだ。
○…「横須賀は、都心(中心)と地方(周辺)の間”半周辺”に位置している。この地域では、社会的に新たな価値観が生み出されやすい」。1955年に「三浦半島自然保護の会」が設立されたのもその一つ。開発がすすむ中、自然を残そうと団体が立ち上がったのは三浦半島ならではの動きであり、当時は画期的だった。「”中途半端”こそが魅力。今後さらに変化があるまち」と故郷の未来に期待を寄せる。「できるなら30年後の沿線の姿もまた書いてみたい」
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