【Web限定記事】コロナの今、その先─ <スポーツ> 困難な状況も悲観している暇はない 須長由季氏(2020東京五輪 ウインドサーフィンRSX級女子代表内定)
新型コロナウイルス感染拡大・外出自粛の影響は多分野に渡っています。「今」の動きと「これから」を各界の関係者に聞きました。
──2月の代表内定後に東京五輪の延期が決定しました。これに対して、率直な気持ちを聞かせてください。
「全く予想もしていなかった出来事であり、多少の混乱はあったが、状況が状況なので受け入れるしかなかった。今は気持ちの切り替えができている。延期となったことでその分じっくり準備ができると、ポジティブに捉えている」
──3・4・5月は、外出自粛要請などもあり、思うように練習や選手活動ができなかったと思います。その間、どのように過ごしていたか、聞かせてください。
「海岸の利用制限があり、海上でのトレーニングは断念せざるを得なかった。オンラインでトレーナの指導を受けながら筋力アップに励んだり、自転車を走らせて有酸素運動を行ったりして、フィジカルの強化に取り組んだ。焦らずに、今やれることを精一杯やるしかない、という気持ち」
── 1年後の東京五輪をめざして、リスタートを切る形となりましたが、当面のスケジュールを聞かせてください。
「現在は風の様子やコンディションを見ながら、葉山新港と津久井浜海岸を行き来する形で練習を行っている。緊急事態宣言が解除されたので、これからは五輪会場となる江ノ島ヨットハーバーに移動して、本番まで練習を積むことになる。各国の代表選手と今の自分の立ち位置を把握するために、国際大会にも積極的に参戦したいが、国内外を通して開催の見通しが立っていない」
──東京五輪の延期はプラスの面もある、とのことでした。踏み込んで聞くと、それはどういった理由からでしょう。
「昨年12月の世界選手権では21位の成績。これを五輪に置き換えた場合、正直なところトップ10で競われる『決勝メダルレース』(五輪では最終レースに上位10選手のみ出場できる)のレベルには、実力的に到達していない。本番まで準備期間が半年しかなく、実はとても焦っていた。今回の件で、成長のための時間的猶予を得ることができた。勝手知った湘南の海面でレースを行えることも大きなアドバンテージ。フィジカル・テクニックの両面でまだまだ発展途上、成長の余地はある。1年間を有意義に過ごし、世界のトップ選手たちとの差を埋めたい」
──一方で選手活動の継続には、大きな費用負担を伴います。状況はどうでしょうか。
「1年間の延期により、金銭面を含め大幅な計画の見直しを迫られている。海外レースの遠征費とコーチング費、用具代などをトータルして1千万円超が必要。所属先(ミキハウス)のサポートに加えて、新たなスポンサーを開拓していかなければならない。万全の態勢で挑むための環境整備を選手活動と並行して進めている」
──コロナ禍を受け、企業がスポーツ全般を支援する形にもこの先、変化がありそうです。このあたりに関して、選手としてどのように受け止めていますか。
「企業が厳しい環境に置かれているのは、スポンサー活動をする中で、痛切に感じている。コロナ禍により社会全体が大きな痛手を負っており、8年前にロンドン五輪の出場を決めた時とは経済的な事情を含めて全く違う状況にある。それでも自分は、東京五輪に照準を合わせてこれまで選手活動を続けてきた。掴んだチャンスを諦めるわけにはいかない。応援してくれるスポンサーに熱意をアピールし続けるしかないと思っている」
──あらためて、1年後の東京五輪の目標を聞かせてください。
「8位入賞。それには『決勝メダルレース』への出場が不可欠なため、セーリング技術だけででなく、身体の使い方など細部も見直し、最高のパフォーマンスを発揮できるよう全体のレベルアップに努めている。五輪本番までに、ひと皮もふた皮も剥けた姿をお見せしたい」
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