今年8月に長崎で新しいフェリーの命名進水式が行われた。船の名前は横須賀の市の花から取った「はまゆう」。横須賀新港と北九州港を結ぶフェリー航路のための船だ。
市が、この新たな航路の開設を発表したのは2018年12月。物流ドライバー不足や貨物・旅客の輸送手段を環境負荷の少ない船舶に移行する「モーダルシフト」の動きもあり、市では横須賀港での定期航路の実現を目指してきた。新航路はそれが実った形で、就航開始は来年7月。しかし、ターミナルの設置を予定している新港ふ頭の利用を巡り、港湾事業者との協議が難航している。
そもそも新港ふ頭はどのように使われているのか。市が管理する公共ふ頭で、埋め立て整備から40年以上経過。国際貿易港として、主に自動車の輸出、マグロの輸入を担っている。これに携わるのが市内の港湾事業者で、16社で横須賀港運協会を組織する。
新航路開設にあたり、市はフェリー発着のためのふ頭整備を計画。この内容に異議を表したのが港運協会だ。手狭な新港ふ頭で工夫しながら荷役事業を行ってきた。こうした状況の中で、新たにフェリーターミナルと乗降の待機場、荷役共用スペースを設けるという市の計画。同協会が図面を示されたのは昨年9月のことで、作業の安全性が担保されないとして、以降一貫して市に対して反対の意を示してきた。市議会でも「(利用のすみ分けが)綱渡りだが物理的に大丈夫か」という指摘もあった。さらに協会が懸念するのは、夜間の作業による騒音や300台を超えるトラック・自動車の往来など、周囲の生活環境への影響。先月、新港に最も近いマンションの管理組合から、「事業内容を知らされていない」として説明会を求める要望が市に出された。
こうした動きがある中、市議会での予算可決を受け、新港ふ頭では先月24日から関連工事が始まっている。これを受けて、同協会は「就航に間に合わないと計画を強行されれば、港湾事業は継続不能になる」と不安をのぞかせ、「国際貿易ふ頭に定期便フェリーを共存させるという先例はない。既存の船社や荷主からも敬遠される」と危惧。反対の姿勢は崩しておらず、両者の溝は深まるばかりだ。
現在、首都圏と九州を結ぶ直通航路がなく、旅客面でもフェリーへの期待も沸く。ただ、その船舶も通常のフェリーとは異なり、トラック約150台・乗用車約30台と貨物輸送がメイン。「夜間の発着でどのような経済効果が生まれるのか」と懐疑的な声もある。市はこれまで「(事業を)丁寧に説明していく」と繰り返してきた。このような事態になった今、事業内容だけでなく今後の港湾計画、「公共ふ頭の在り方」を市民や事業者に示す姿勢が求められている。
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